サッカー日本代表 激闘日誌BACK NUMBER
ジャーナリスト大住良之が目撃した激闘の記憶
text by
大住良之Yoshiyuki Osumi
photograph byAFLO
posted2018/04/13 10:00
リネカー擁するトッテナムを4-0でくだし、キリンカップ初優勝を喜ぶカズ(右)とラモス。
福田、北澤、カズが次々とゴールを。
ところが試合が始まってみると、日本代表が猛烈なスピードでトッテナムを圧倒する。
前半2分、右コーナー近くまで押し込んでのスローインを受けたカズが得意の「またぎ」でマーク相手を翻弄して福田にバックパス。こんどは福田がカミソリのように鋭いドリブルで相手を抜き、ゴールライン沿いからライナーのクロス。ニアポストに飛び込んだ北澤が鮮やかなダイビングヘッドで叩き込んだ。
さらに8分には、相手の右CKをはね返したボールを自陣ペナルティーエリア左外でカズが受け、そこから強烈なカウンターを繰り出す。
ドリブルで一気にハーフラインを越えたカズが右からサポートするラモスに大きくサイドチェンジ。その2人の間を北澤が駆け抜け、ラモスの前のスペースで受けようとすると、北澤に引きつけられた相手守備陣をあざ笑うかのようにラモスは左に大きく振る。
走り込んだのはカズ。GKの出ばなをついてゴールに流し込んだ。
そして40分には、中盤でボールを受けたカズが2人のDFをあっという間にかわしてペナルティーエリアにはいり、冷静に3点目。後半20分には、カズの右CKからゴール前混戦になったところを阪倉が至近距離から叩き込み4-0と差を広げた。
バックスタンドで「サポーター」の萌芽が。
バックスタンドでは、20人ほどの若者が歌を歌い始める。この時代まで日本のサッカーではまったく見られなかった「サポーター」の萌芽だった。
大会前、入場券売り上げ不振のてこ入れをしようと、日本サッカー協会が記者会見を開き、日本代表に「優勝したらひとりあたりボーナス50万円」という破格の発表をした。
完全なプロ体制への移行は翌年だが、選手たちの多くはすでに所属チームとプロ契約を結んでいた。