野ボール横丁BACK NUMBER
ベンチに反し「打っちゃいました」。
智辯和歌山を後押しした勢いの正体。
posted2018/04/03 17:00
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Kyodo News
東海大相模のエース齋藤礼二のあだ名は「綿棒」だ。
「細いのでしょうがないです……」
身長173センチ、体重64キロ。そんな小さな齋藤の最大の武器は冷静さだった。この日の相手は、準々決勝で最大5点差を跳ね返し創成館に11-10でサヨナラ勝ちを収め勢いに乗る智辯和歌山。
「勢いに勢いで返したら危ない。基本の野球でいきたいと思います」
齋藤の基本は「粘り強さと、テンポのよさ」である。
東海大相模を率いる門馬敬治監督は、齋藤のよさをこう語る。
「スピードガンの数字は140前後ですけど、ベース板上での強さがある。だから、高めの真っすぐがバックネットへのファウルになるんです」
その秘密を、齋藤はこう語った。
「力感なくストレートを投げるようにしているので、思ったより伸びを感じるんだと思います」
大阪桐蔭と智辯和歌山の違い。
東海大相模は、大阪桐蔭と夏の大会前に定期戦を行っている。齋藤は試合前、大阪桐蔭と智辯和歌山の違いをこう語っていた。
「大阪桐蔭はコンパクトに強く振る印象があるけど、智辯和歌山はコンパクトというより思い切り振ってくる。ストレートには強いので、ストレートを見せ球にしながら、変化球で勝負していきたい」
齋藤の出番は、4-5とされた4回表、2アウト二塁の場面で巡ってきた。ピンチを切り抜け無難に立ち上がったが、7回表に1失点するなど、少しずつ智辯和歌山打線にとらえられるようになってくる。捕手の佐藤暖起が振り返る。
「最初はツーシームでうまく詰まらせてたんですけど、2巡目からだんだんついてくるようになってきた」