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柴崎岳、独占ロングインタビュー。
「スペインで磨いたものを代表で」 

text by

豊福晋

豊福晋Shin Toyofuku

PROFILE

photograph byDaisuke Nakashima

posted2018/03/19 08:00

柴崎岳、独占ロングインタビュー。「スペインで磨いたものを代表で」<Number Web> photograph by Daisuke Nakashima

アギーレ前監督の頃から次代のプレーメーカーとして期待された柴崎。スペインで花開きつつある力を見せてほしい。

移籍直後は「神経質になっていた」。

 バルセロナからテネリフェ島へ向かう機内、窓から見た景色を今も覚えている。

「長いなあ、と思いながら乗っていました。すごく緊張もしていたし、あの頃のことはよく覚えてます。いろんなことに対してナーバスに、神経質になっていたかな。去年の2月、ちょうど体調を崩しているとき。ずいぶんと前のことのように感じます」

 メディアの注目も高い、大きな期待を背負っての移籍。しかし柴崎は体調を崩し、練習もままならない時期が続いた。

 原因は疲労と精神的ストレスだ。鹿島でシーズンを終え、チャンピオンシップ、クラブワールドカップ、天皇杯も戦った。休まずにスペインに渡り、日々動く交渉を見守った。肉体的疲労に、初の海外という精神的な不安やストレスが重なっていった。

「練習もプレーもできなかった頃、自分の中には焦りがありました。結果を求めてやっているのに、それができていなかった」

「周りの人のありがたさを感じた」

 あらゆる報道がされた。不安障害と報じるメディアもあり、島の食事や水が合わないという憶測もあった。報道に関してはあまり気にしないが、噂は耳に入ってくる。

「プロは良ければ賞賛されて、悪かったら叩かれる世界。いちいち気にしても仕方ない。ただ報道は自然と耳には入ってくるし、やっぱり気にならなくはない。周りの人も心配していたので。苦しかった頃、自分の支えになってくれた人が4人いて、その人たちには特に感謝しています。周りの人のありがたさを感じた時期だった」

 幸い、島には見どころがたくさんあった。オフの日には島の火山、テイデ山に出かけた。大西洋の上に浮かぶ島の中心。目の前には赤茶けた大地と広大な景色があった。

「ひとりでホテルの部屋にこもっても仕方ないから、車でドライブしたり、火山に行ったり。海も綺麗でしたね。いろいろあったけど、やっぱりあの半年はよかった」

 心身両面で回復を見せた柴崎はやがて練習に復帰。そんな彼をチームメイトは優しく迎え入れた。主将のスソは「俺がうまい日本食レストランを教えてやる!」と息巻いた。監督の気遣いも身にしみた。戻ってきた初日、柴崎はチームの前で謝罪した。

「故意じゃないけど、報道で周辺を騒がせたのは事実だったので。みんな快く迎えてくれた。体調が悪くて、気乗りしなくて練習に行けなかった時期も、マルティ監督は楽しませてくれようとした。彼は尊敬できる人。スペインサッカーの楽しさを教えてもらえたし、彼に会えたのは良かった」

【次ページ】 昇格プレーオフ決勝、涙の主将に……。

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