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本田圭佑の正体を兄・弘幸から探る。
「周りを変える」驚異的才能とは?
posted2018/03/19 11:30
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph by
Atsushi Kondo
日本サッカー協会の会見場、ハリルホジッチ監督が明かした欧州遠征メンバーのリストにこの名前があった。
本田圭佑。
およそ半年ぶりの代表復帰である。
W杯イヤーが明けても、なぜか日本代表への期待が高まらなかった。本田だ。本大会が近づくにつれて、胸の奥に膨らんでくる、この期待感は何だろうか。W杯における日本人最多3ゴールの実績か。それとも別の何かか。
その正体を彼のルーツに求めた。
「自分が変わるのではなくて、周りを変える」
本田弘幸。
3歳上の実兄であり、現在は弟・圭佑を含む多くのトッププロを抱えるエージェント(代理人)である。この世でたった1人の兄と弟は、それぞれが小学5年、2年の時に両親が離婚し、父方の祖父母の家で暮らすことになった。明けても暮れても競い合い、ボールを追いかける日々の中で、兄は弟の“特別な力”を目の当たりにする。
「圭佑はあまり同世代の友達と遊ばずに僕の友達と遊んでいました。僕が友達の家に行ったら、先に圭佑がいましたから。誰の友達やねんって(笑)。小学生の時から、僕の中学の部活に参加していましたし。気づいたら先生や他の部員に可愛がられて、入っている。僕は『またかよ』って感じです(笑)。その辺は天才的なんじゃないですかね。今にも生きているというか」
3歳という差は、子供にとって決して小さくない。「チビ」と呼ばれていた少年は、それをめいっぱい背伸びしながら乗り越え、兄の住む世界に居場所をつくった。足りないものを承知で、自分のできること、やりたいことを主張し、周りに認めさせてきたという。
「自分が変わるのではなくて、周りを変える。主張して認めてもらう作業を惜しまないっていうのは当時から始まっています。ただ、子供の時はバッと主張して、あかんかったら喧嘩して殴り合い。でも、それがプロになってからは、自分が合わせるところと主張するところ、考えながらやっているなとは思います。
僕も、監督と繊細な話をする時は、グラウンドではなく落ち着いてから監督室をノックした方がいいとか、そういうことは話したりします」