マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
二松学舎で1年秋から3番を打つ男。
平間陸斗の精神年齢と実戦力に唸る。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2018/03/05 08:00
平間陸斗の2年の夏は、3回戦で三本松(香川)に敗れて終わった。最後の夏、一回り大きくなって帰ってこられるか。
高校生離れした“実戦力”。
「絞り球をはっきり決めて……っていうのはあります。最近は初球から変化球で攻められることが多いんで逆に変化球待ちで、甘いストレートが来ても対応できるように」
練習中の立ち話だったのであまり深い話もできなかったが、高校生なら普通はストレート待ちでいきたいだろうに、最初から変化球待ちでいこうとする“実戦力”。
意識の高さが違う。
「こんなことがあったんですよね……」
二松学舎大附・市原勝人監督の話が興味深かった。
送りバントのサインに「ええっ!」。
ある公式戦でのこと。確実な送りバントに定評のある高校を相手に、「バントは向こうのほうが上だから、今日は送りバントのサインは出さない」と、試合前のミーティングで市原監督が宣言した。
「ところが、想定外に点が取れてコールドスコアですよ。その上、チャンスで平間にまわってきた。ここで1点追加して安心したいって気持ちが私の中に湧いてきて、自分で『今日はバントは使わない』って言っておきながら、スクイズのサインを出してしまった。
そうしたら平間が、『ええっ!』って顔したんですよ。『監督さん、打って点取れって言ったじゃないですか』みたいな、いかにも『話が違うじゃないですか』みたいなね」
ハッとしたという。
すぐに“取り消し”のサインを出したら、平間陸斗、次の投球でものの見事に左中間をライナーで破ってみせた。
「一度決めて伝えたことは貫かないとダメなんだって、なんだか、彼に教えられたみたいな気がしましたね」
負うた子に教えられ。
監督冥利に尽きる場面だったはずだ。