マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
竹バットでフェンス直撃の高校生。
唐津商・土井克也は「谷繁元信」だ。
posted2018/03/08 07:30
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Sports Graphic Number
3時間のラジオ番組に呼んでいただいて、博多にやって来た。
「野球」についてのあれこれを話したり、リスナーの質問に答えたり、とりとめのない内容だったので、むしろ気楽に大胆な発言もさせていただいて、私にはとても充実した3時間だったのだが、果たして聴いていただいた皆さまにはどんなものだったろうか。
放送メディアに呼んでいただけるのは光栄なのだが、本番のあとは「ほんとにあれでよかったのかなぁ……」と、少なからず“ブルー”になるのが常である。
ラジオが日曜で、せっかくの福岡なのだから、この機会に何カ所か回らなければもったいない。ところが、翌日の月曜が困った。近年、高校や大学の野球部には「月曜オフ」が広まりつつある。
案の定、どこに問い合わせてみても休みなので、ならば! とハラを決めて、ダメもとでいちばん気になっている選手のもとへ足を運んでみよう。
鮮やかな記憶に残るショートゴロ。
唐津商業高の捕手・土井克也(3年・180cm78kg・右投右打)。
一昨年の夏、1年生で甲子園の土を踏んでいる。緒戦で木更津総合高に敗れたが、快腕・早川隆久(現・早稲田大)に2安打完封に抑えられた中で、与えられた1打席でバットの芯で捉えたショートゴロが鮮やかな記憶として残っている。
しかも、その前の佐賀県予選での成績が“1年生ばなれ”していた。2試合ではあるが、4打数2安打。長打はなかったが、四死球3をもぎ取っている。その事実も印象をさらに強くした。
たった1試合、たった1打席、いや、その中のたったひと振りでも、ピンと来た感触は大切にしたい。あれから1年半、どんなふうに変わっているのか、いないのか。
博多から唐津、向こうは佐賀でも電車で1時間だ。
練習が休みだったら、風光明媚な土地と聞く城下町・唐津のたたずまいを味わって、それでよかった……と帰ろう。勇躍、唐津に向かった。
放課後の時刻を狙って、学校へ向かう。下校してくる生徒の中に坊主頭がいない。もしや……。校門をくぐってすぐ、野球部独特のかん高い“喚声”が聞こえてきた。勝った!
「動け!」
今年の、私のスローガンを思い出した。