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ドルトムントが警戒する地方クラブ。
セリエA下位から、2年でEL決勝Tへ!
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2017/12/28 07:00
強面の監督も多いセリエAにあって、懐の深い人心掌握を見せるガスペリーニの存在感は際立っている。ビッグクラブにいつ引き抜かれてもおかしくない。
「ゴメス? 誰それ?」に主将がカチン。
勝負は出足で決まった。
初戦でエバートンを相手にまさかの3-0快勝を収めた後、アタランタは2節目のリヨン遠征に臨んだ。
今季のELファイナルを誘致している強豪リヨンは早々と高揚しすぎたのか、エース兼主将のMFフェキルが試合前にアタランタを挑発してきた。
「有名な選手は見当たらないな。(主将の)ゴメス? 誰それ?」
アタランタを引っ張る主将ゴメスは、昨季の大躍進を担った主役の1人だ。プロビンチャーレ・レベルでは反則級の高い技術レベルを持ち、陽気なダンスでチームのムードメーカーも務める。身長165cmのファンタジスタは物言うタイプの小さな親分だ。
昨季までの活躍が認められ、今年の6月に29歳と遅咲きながら母国アルゼンチンの代表デビューも飾った。
だから、5歳年下であるフェキルの「誰それ?」発言にはカチンときた。この世界、相手に舐められたらお終いだ。
「これで奴らも少しは俺の顔を覚えただろ」
しかし敵地「パルク・オリンピック・リヨン」に乗り込んだアタランタは、アウェーの重圧に圧された。彼らは欧州では新参者同然だからで無理もない。前半終了間際に先制点を許すと、劣勢は明らかだった。
30間近のベテラン主将とアタランタにとって踏ん張りどころだった。
57分、ゴール前FKを得たゴメスは短いステップから右足を振りぬいた。低い弾道がゴールに吸い込まれた瞬間、リヨンの主将フェキルは相手の闘志に火をつけた己の失言を後悔したはずだ。
敵地での値千金のドローがグループEの趨勢を決めた。試合後、ゴメスは「これで奴らも少しは俺の顔を覚えただろ」と胸を張った。初めてプレーするELに小さな親分も興奮を隠さない。
「ELはさ、やっぱりテンションが上がる。どんなに疲れていても、やる気が出てくるんだよ」