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ドルトムントが警戒する地方クラブ。
セリエA下位から、2年でEL決勝Tへ!
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2017/12/28 07:00
強面の監督も多いセリエAにあって、懐の深い人心掌握を見せるガスペリーニの存在感は際立っている。ビッグクラブにいつ引き抜かれてもおかしくない。
ドルトムントを引いて「うちのクジ運は最高」。
来年2月から始まるEL決勝トーナメントの1回戦の相手は、ドイツの強豪ドルトムントに決まった。
練習場のバールでチームメイトと抽選を見守っていた主将ゴメスは「ちっ……ついてねえな」とツイッターでつぶやいた後、ドルトムントのライバルクラブ、シャルケでプレーする同胞の友人FWディサントのユニフォーム画像を添えて「やってやるか!」と投稿した。ユーモアたっぷりの親分はすでにやる気十分だ。
抽選直後には「うちのクジ運は最高じゃないか」と皮肉めいたガスペリーニも気を取り直して「もう何でも来いだ。美味しいところはうちが全部持っていこうじゃないか!」と闘志を新たにする。
今年8月、両者は中立地オーストリアでプレシーズンマッチを戦っており、そのときはアタランタがMFイリチッチのゴールによって1-0で勝った。ただし、このときは主将ゴメスも相手のエースFWオーバメヤンも不在だった。
アタランタの選手もサポーターも、ドルトムントのホーム「シグナル・イドゥナ・パルク」の脅威と熱狂ぶりは熟知している。負ければ即敗退の真剣勝負である今回の好カードを、どれだけのファンが地元ベルガモのスタジアムで観たい、と願ったことだろう。
新スタジアムの購入も決定した伝説のシーズン。
今年5月、ベルガモ市当局は競売に出していたスタジアム「アトレーティ・アッズーリ・ディターリア」の売却先をアタランタに選定したと発表した。
念願のマイホームを手に入れるアタランタは、外観を一新させ、全天候型のイングランド式への改修を目指し来夏にも工事に着手する。欧州カップ戦で使用できるのは工事が完了するふた夏先の'19年からだ。
ガスペリーニとの契約はオプションまで含めると'21年まで残っている。イタリアの再建を託す次の代表監督に推す声も高まっているが、笑って就任を否定する智将はアタランタで欧州を目指す。
「スタジアムに来てくれたファン、家族連れの子供たちがアタランタに熱狂してくれる。たまらなく嬉しいことだ」
北都ベルガモの冬は厳しい。
ただ、どんな形で終わろうとも、アタランタのサポーターたちにとって今季は伝説とすべきシーズンだ。長い冬も、2018年に待っている欧州の強豪との対戦を家族や友人たちと、夕食会やバールでニンマリと語らいながら盛り上がれる。
何て心弾む年越しだろう。