プレミアリーグの時間BACK NUMBER
CBに113億円つぎ込んだリバプール。
ファンダイクは移籍金に見合うの?
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2018/01/08 07:00
サウサンプトン時代には吉田と堅守を披露したファンダイク。超高額の移籍金の重圧を跳ね除けられるか。
サウサンプトンの守備リーダーは吉田麻也に。
193cm92kgというフィジカルの持ち主は、空中戦でほぼ無敵。なおかつサウサンプトンで3指に入るスピードの持ち主。またボールコントロールやロングボールも正確で、自らドリブルで持ち上がる。危機察知能力を含むDFとしての頭脳、『タイムズ』紙のインタビューでも自身が口にした「リーダーシップ」の持ち主でもある。
サウサンプトンはそれだけの選手を失ったわけだが、後釜探しの緊急度はそこまで高くない。ファンダイクが最後に本領を発揮したのは2017年1月だからだ。足首の怪我による昨季後半の長期戦線離脱、昨夏のリバプール移籍失敗、今季前半戦はモチベーションが明らかに低下していた。そんなファンダイク不在でも、チームはリーグカップ決勝進出とリーグ8位で昨季を終え、今季も5年連続のトップ10に向けて闘っている。
守備のリーダー格は、在籍6年目で古株となった吉田麻也だろう。度重なる新ライバル出現にもめげず、しぶとくポジション争いで生き残りながら、欧州トップレベルへの適応に取り組んできた日本代表CBは、昨季終盤あたりからイングランド人にも「プレミア級」という目で眺められるようになった。
昨季4月にファン投票でクラブの月間最優秀選手に選ばれた吉田は、今季は8月にも同じ栄誉に輝いている。いずれも、ファンダイクがベンチにすらいなかった時期に、チームの屋台骨を支えた働きが認められての受賞だ。新契約もつかんだ吉田のパートナー役には、ジャック・スティーブンスの他に、今季新戦力のウェズレイ・フートもいる。サウサンプトンが補強を急くべきは、むしろ決定力不足の改善だ。
「値札は忘れてもらうしかない」(クロップ)
一方、リバプールは守備力の改善が火急の課題だった。22節終了時点で25失点。このペースで失点を重ねれば、今季終了時には43失点。ユルゲン・クロップ体制下で40失点以上を3年連続で記録したとすれば、プレミアの強豪として不名誉と言わざるを得ない。状況改善に向けて「意中の人」を手に入れた指揮官は「値札は忘れてもらうしかない」と移籍金の高さには取り合わず、満足げに新CBのクオリティを強調したがるのも当然だ。
とはいえファンダイク加入だけで問題が全て解決するわけではない。だが、統率力と統制力を兼備する待望の新戦力は、目に見える変化をもたらせるはずだ。