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天皇杯って実は戦後に始まった?
喜び、切なさが交錯する元日決戦。 

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茂野聡士

茂野聡士Satoshi Shigeno

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posted2018/01/01 07:00

天皇杯って実は戦後に始まった?喜び、切なさが交錯する元日決戦。<Number Web> photograph by AFLO

元日に数々の激闘が繰り広げられた天皇杯決勝。1999年1月1日のフリューゲルス優勝は日本サッカー史に残る記憶だ。

フリューゲルス優勝と消滅、マリッチの大爆発。

 各競技の“日本ナンバーワン”を争う大会と言える天皇杯。サッカーは決勝が元日開催なこともあって祝祭感が強く、シーズン最後の公式戦でもあるため、様々な感情が交錯する。

 1999年の元日には、そのシーズン限りでのチーム消滅が決まっていた横浜フリューゲルスが決勝の舞台に立ち、清水エスパルスを2-1で撃破した。

 NHKで実況を務めた山本浩氏の「私達は忘れないでしょう。横浜フリューゲルスという、非常に強いチームがあったことを。東京国立競技場、空は今でもまだ、横浜フリューゲルスのブルーに染まっています」という言葉は、彼らとファンの喜びと切なさを象徴するかのようだった。

 またチームを去る選手のために優勝を――といったモチベーションが生まれるのも天皇杯ならでは。

 自ら大活躍して花道を飾ったのは2005年度、浦和レッズに所属していたマリッチ。半年間だけの在籍だったが、天皇杯で5試合6得点の大爆発。清水との決勝戦でも試合を決定づける追加点を決め、タイトルをもたらしてサポーターに別れを告げた。映画のような、カッコよすぎる去り際である。

「平成最後の天皇杯」が近づいてきている。

 さて、2019年4月30日に天皇陛下が退位され、翌5月1日に皇太子さまが即位されることが決まっている。それにあたって元号を改める「改元」が実施されるため、「平成」の時代はもうすぐ幕を閉じることになる。

 つまり「平成最後の天皇杯・皇后杯」の時が近づいてきている。これから1年4カ月の間に実施される天皇杯や天皇賞、皇后杯に勝利すれば、“平成時代最後の天皇杯王者・皇后杯女王”となるわけだ。その王者となれば、それこそ一生に一度しかないチャンスである。それぞれのスポーツ史に名を残すために、ここで奮起しない手はないだろう。

 天皇杯が描いてきた時代の流れに思いを馳せつつ、元日のピッチに立つセレッソ大阪と横浜F・マリノスの選手たちの奮闘に手に汗を握る。そんな2018年1月1日も趣深いのではないか。

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