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憲剛、小林悠とジュニーニョの教え。
初栄冠は「川崎の太陽」に照らされ。
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/12/29 11:30
憲剛のスルーパスからジュニーニョが決める。あの時代から10年、川崎は念願のタイトルを手に入れた。
「もう知らないよ」とパスしたら、あっさりゴール。
相手にマークされているジュニーニョに一か八かの縦パスを入れるのは、奪われてカウンターを浴びる危険性と背中合わせでもあった。まだ経験が浅く勇気が出せなかった中村だったが、次のチャンスでは、悩みながらも勝負のパスを配給する開き直りを見せた。
「そこで『どう見てもマークされているじゃないか……』と思いつつ、『もう知らないよ』と思って、エイッと縦パスを入れたんです。するとジュニーニョは、そのパスをピタリと止めて、クルッと反転して、あっさりとゴールを決めてしまった。あれは衝撃でした。この試合から迷いなく縦パスをチャレンジするようになりましたね」
こうしてJ2時代にジュニーニョと中村憲剛で確立されたホットラインは、J1復帰後の川崎フロンターレの代名詞にもなった。そこから現在までの中村の活躍は、説明するまでもないだろう。昨年度はJリーグ年間MVPを最年長で受賞し、ギネス記録として認定。今季もJリーグベストイレブンに選出されている。クラブのバンディエラとして君臨し続けている。
小林悠には「練習中も俺のことを見ておけ」。
一方、2017年度のJリーグ得点王にして、年間MVPである小林悠にとっても、ジュニーニョとの出会いは大きなものだった。
小林が川崎フロンターレに入団したのは2010年。当時のジュニーニョはすでにベテランの域に差し掛かっていたが、ほとんどの期間をリハビリに費やしていた小林にとって、クラブで長年ゴールを奪い続けてきた「川崎の太陽」はあまりに眩しい存在だった。
転機となったのは、翌年の2011年。
2年目の小林は背番号11を背負うことになり、背番号10のジュニーニョとはロッカールームが隣になったのである。
旧クラブハウスのロッカーは狭いことで有名だった。自然と距離は縮まり、日常的に接する機会が多くなったある日、小林はこう告げられた。
「俺のことをよく見ておけ。練習中も、自分の近い場所にいてプレーを見ろ」