強引なシュートに「お前はチョン・テセと一緒か！」

　なぜあのときの自分に、そんな声をかけてくれたのか。ジュニーニョの真意は、いまだにわからないと小林本人は言う。だが、その言葉をきっかけに、そのプレーぶりをつぶさに観察し始めるようになった。

　蹴り方は独特だったが、抜群の技術を誇る左足のキック。体格は決して大きくはないものの、取られない位置にボール置くトラップでのポストプレー。日々のトレーニングを通じて一級品の技術を反芻しながら、自分なりの研究を重ねていった。

　練習中に可能性の低いシュートを強引に打てば、「お前はチョン・テセと一緒か！」と冗談交じりのアドバイスをくれるような師弟関係ではあったが、そうした研鑽を経て、小林は少しずつ成長を遂げている。

苦しいときにゴールを決めるストライカーになれ。

　その年に12得点をあげて最初のブレイクを果たしているが、そこにジュニーニョという生きた教材があったことと無関係ではないだろう。そして、'11年限りで退団することになった「川崎の太陽」から、小林はこんな言葉をかけてもらっている。

「チームが苦しいときにゴールを決めるストライカーになれ」

　この言葉は、小林の心に今も深く刻み込まれることとなる。

　あるとき、「（ジュニーニョ）本人はもう忘れているかもしれないですけど」と笑っていたが、小林がことあるごとに「チームを勝たせられるストライカーになりたい」と口にするのは、ジュニーニョに託されたこの教えがあってのことである。

　事実、今季は自らの得点で幾度となく難局を救って見せた。優勝の決まる最終節でハットトリックを達成したのは、いささか出来過ぎな感が否めないが、そこはサッカーの神様が「得点王」というご褒美を用意してくれたのかもしれない。

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