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川崎の小林、大島ら獲得に教訓あり。
内田篤人に“フラれた”名スカウト。
text by
海江田哲朗Tetsuro Kaieda
photograph byTetsuro Kaieda
posted2017/12/13 10:30
現役時代は小柄なアタッカーとして知られた向島。今は光る原石を見つけるための活動を続けている。
大学4年でひざの靭帯断裂の重傷を負っても獲得。
2010年、小林は拓殖大から川崎に加入。大学4年時の秋、右ひざの前十字靭帯断裂の重傷を負ったが、「プロになれば誰もが故障と向き合うことになる。早いか遅いかの問題だ」と向島は小林を励まし、獲得に踏み切った。
「うちには中村憲剛を筆頭に、優秀なパスの出し手はいる。求めていたのは、最後を仕上げてくれるストライカー。不安要素はありましたよ。3年時、小林は得点王になっていますが、それは関東大学リーグ2部での実績。右ひざが完治し、パフォーマンスが完全に戻るまでどの程度時間を要するのかというのも予測が難しかった」
プロ2年目、小林は32試合12得点をマークし、周囲は向島の慧眼を称賛した。だが、自身は釈然としない感触を抱えていた。
「たしかに結果は出した。でも、自分の見てきた小林はまだまだこんなものではない。もっと力を発揮できるはずだという思いでした」
大島、谷口、車屋も発掘してチームの主力に。
ゴール前での怖さが物足りなかった。それをようやく取り戻したのは、2、3年前からだ。スピードとパワーを合わせ持ち、ボックスに侵入する動きで相手を恐怖に陥れる。
「これだよ、これという感じです。ゴールを奪うために猛然と突っ込んでいくときの怖さ。小林のここに自分は惚れ込んだんだと」
現在、川崎の中核を担い、日本代表にも選出される大島僚太、谷口彰悟、車屋紳太郎もまた向島の仕事だ。チームが長いサイクルを安定して回せるのは、スカウトマンの貢献なくしては考えられない。
「プロの世界で結果を出し、さらに上のレベルに到達する選手は総じて優れた人間性を備えています。最終的にはそこが大事になるので、獲得の際には重視しますね」