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転倒寸前のバイクを起こす超絶技巧!!
MotoGP、マルケス/ホンダの偉業。
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2017/11/29 08:00
優勝セレモニーで用意されたサイコロを振ったマルケス……出た目は「6」! 自身6回目の今季優勝を象徴する、笑顔のパフォーマンスとなった。
“我慢の走り”と“攻めの走り”と。
その“我慢の走り”が際立ったのは、シーズン3勝目を挙げた第10戦チェコGPだった。
ウエットからドライへと変化する難しいコンディションとなった戦いでマルケスは、大きなリスクを覚悟しつつ、だれよりも早くスリックタイヤを装着したマシンに乗り換えて勝利を呼び寄せている。
ウエットコンディションとなった第13戦サンマリノGPでは、チャンピオン争いとは関係ないダニーロ・ペトルッチ(ドゥカティ)を相手に最終ラップに勝負して勝利を掴んだ。
このレースを終えた時にマルケスは、「リスクを冒して優勝を狙うことになったが、2位で終わるよりもさらに5点を追加することが出来た。これがチャンピオンシップに大きく影響するかも知れない」と語っていたが、事実、最終戦での決着では、この5点が大きな役割を果たすことになったのだ。
転倒寸前のスライド状態から立て直す超絶技巧!!
勢いと圧倒的な強さでタイトルを獲得した'13年と'14年は、何がなんでも勝ちにいく“マルケス・スタイル”のレースが多かった。
しかし、新レギュレーションが実施された昨年からは、マシンのアドバンテージを生かせるレースが少なくなった。
そして今年は、それに加えてライバルに比べてマシンのセットアップが決まらなかったシーズン序盤の低迷があり、チャンピオンシップから大きく出遅れた。
その遅れを取り戻すためには、昨年覚えた“我慢の走り”だけでは不十分で、時には、何が何でも勝ちにいくあの“マルケス・スタイル”……'13年、'14年のころの積極的な走りが必要となるシーンも増えた。
それを実現させたのが、「転倒寸前のスライドを立て直すテクニック」だった。
一度なら「まぐれ」といわれるだろうが、マルケスは膝だけでなく「肘」まで使うという、まさに超絶技巧とも言えるリカバリーをシーズンを通して何度も見せているのだ。
この技が、“新マルケス・スタイル”の誕生にもつながったことは間違いない。