「プロへ行くならサイドバックの方がいい」

「プロへ行くならサイドバックの方がいい」

　本音を言うとCBをやりたかった。

　でも、自分の目標を達成するためにはそのポジションではいけない……。

　しかし、大学2年の5月に転機がやってきた。CBで守備の要だった新井一耀（現名古屋グランパス）が負傷離脱したことで、右サイドバックだった坂が急遽CBにスライド先発となったのだ。

　そこで坂は、CBを見事にこなしてみせた。

　この年に就任したばかりの堀池巧監督は、その光景を見てこのままCBとして起用することを即断。「競り勝てる選手」として最大限の評価を与え、新井が復帰してもCBのレギュラーとして使い続けたのだ。

「自分のポジションはやっぱりCBなんだ！」

「堀池監督の信頼は凄く嬉しかった。でも心の中で『このままCBをやり続けたらプロになれないだろうな』と思いながらずっとCBをやっていた」

　当初は将来への不安感の方が勝っていた。しかし、徐々に考え方に変化が生まれていった。

「大学3年の1年間、CBとしてプレーし続けたことで、『自分のポジションはやっぱりここ（CB）なんだ』という自覚も芽生えてきたんです。長身の選手相手にも十分通用したし、ヘッドで競り負けることもほとんどなかった。自分が生きるのはこのポジションだと感じたので、『もう一度このポジションでプロを目指そう』という気持ちが芽生えました」

　今年に入ると順大のキャプテンに就任。さらに、ユニバーシアード日本代表にもCBとして選ばれた。

「CBとしてJFLやJ3あたりのチームが拾ってくれたらいいな」

　CBとして自信がついてきたにもかかわらず、それとはまっくた逆の「でも、やっぱりCBでのJ1、2入りは厳しいはず」という不安までは、完全には消えなかった。

　そんな時だった……湘南が彼の獲得に名乗りを挙げてくれたのは。

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