「小さいのに勝っている」という物珍しさなのか？

　今でも彼が180cmオーバーの長身FWに競り勝つたびに、スタンドからは歓声が挙がる。

　特にユニバーシアード競技大会では、彼がヘッドで競り勝つ度に台北のサッカーファンから大きな驚くような歓声が上がっていた。

「僕としては普通のことをしているだけで、特別なことをしている訳じゃない。試合後に『盛り上がっていたよ』と言われても……。『身長が低いCB』ということで、好奇の目で見られている現実を痛感することになります。だから、歓声が上がるのは凄く複雑です。やっぱり『小さいのに勝っている』という物珍しさで沸いていると思うので」

高卒時、プロからのオファーが無かった坂。

　彼は四日市中央工時代からCBをやっていた。高1のインターハイ後にサイドバックからCBにコンバートされると、持ち前の守備センスと縦パスの正確性を買われて、DFリーダーに定着。1年の冬には1学年上の浅野拓磨（現シュツットガルト）と田村翔太（現福島ユナイテッド）の強力2トップを最終ラインからサポートし、高校選手権準優勝に大きく貢献した。高3ではキャプテンを務め、不動のCBとしてチームを統率するなど、しっかりと結果を出してきていた。

　しかし高卒時、プロからの誘いは無かった。

　残ったのは、スカウトからの厳しい言葉だった。

「とあるスカウトの人が『能力的には高いものがあるけど、身長がね……』と言っていたことを耳にしたんです。CBというポジションが好きだったし、やりやすいと思っていたのですが、それを聞いて『あ、CBはキツいんだ。やっぱり自分は違うポジションで勝負をしないとプロにはなれないんだ』と思ったんです」

　大学経由プロでの行きを実現させるべく、坂は順天堂大に進学。1年からすぐに出番を掴んだが、ポジションはサイドバックだった。

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