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「別人」になって4度目のF1王者。
今年のハミルトンは最高の男だった。

posted2017/11/02 07:00

 
「別人」になって4度目のF1王者。今年のハミルトンは最高の男だった。<Number Web> photograph by Getty Images

メキシコGPで4度目の王者に。レースの戦略、戦術、チームとの人間関係、すべてに成熟が見えた1年だった。

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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 2017年のF1王者に輝いたルイス・ハミルトン。レース後の会見で、今年の勝因を尋ねられると、熟考の末、こう答えた。

「ベストマシンを手にしたからではなく、ベストチームにいたからだと思う」

 話は約11カ月前に、さかのぼる。

 2016年のタイトル争いでチームメートのニコ・ロズベルグに最終戦で惜敗したハミルトンは、チームに対して、わだかまりを抱いたままシーズンを終えていた。

 昨シーズン、ハミルトンにはさまざまな不運や納得できないことが度々、訪れた。例えばシーズン前テストで、メカニックがロズベルグ側と入れ替わった。自分のマシンだけに起こる信頼性の低下に、ハミルトンはメカニックの交代が一因ではないかと疑念を持った。

ハミルトンとチームにできた溝を埋める話し合い。

 決定的だったのは、タイトルを賭けて臨んだ最終戦アブダビGPでの、チーム戦略だった。

 ポイントリーダーのロズベルグと選手権2位のハミルトンとの差は12点。ハミルトンが優勝しても、ロズベルグが3位以内でフィニッシュすれば、逆転できない。そのため、レースで先頭に立ったハミルトンはただ勝つのではなく、2番手で追走するロズベルグが4位以下になるよう、意図的にスローペースで走ってライバルにロズベルグを攻撃させるという頭脳的な戦法を採った。

 だが、チームはその戦いを良しとしなかった。ハミルトンに無線で「ペースを上げろ」と指示。結果、ハミルトンはタイトルを逃した。

 レース後、ハミルトンとチームとの間には明らかに溝ができていた。この状況で動いたのが、チームを指揮するトト・ウォルフだった。クリスマスを2週間後に控えた12月11日、日曜日。自宅があるイギリス・オックスフォードにハミルトンを招いて、話し合いの場を設けたのだ。

【次ページ】 精神的支柱ヘインズが両者の歩み寄りに一躍買った。

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