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「別人」になって4度目のF1王者。
今年のハミルトンは最高の男だった。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2017/11/02 07:00
メキシコGPで4度目の王者に。レースの戦略、戦術、チームとの人間関係、すべてに成熟が見えた1年だった。
「信じてくれたみんなに感謝したい」(ハミルトン)
だが、戦いを終えた後、バレスは自分がとった行動が間違いだったことに気がつく。
「チーム内の掟は、いまでも我々のチームに生きている大切なものであることに変わりはない。しかし、あのとき我々はすでにコンストラクターズ選手権を制していた。残るはドライバーズタイトルのみで、その可能性はロズベルグだけでなく、ハミルトンにも残っていた。つまり、チーム内の掟を守る必要はなかった。私がレース前にルイスに助言すべきは、『接触しない限り、自由に戦っていい』という言葉だったのではないか」
アブダビGPから2週間。ウォルフの家のキッチンで、バレスは自らの非を認め、謝罪した。
その後も4人は約2時間半にも渡って、さまざまなことを話し合った。ミーティングを終えたウォルフはハミルトンに今後、チームとどのような関係を築くのかという結論を、その場で求めなかった。
こうして幕が開けた2017年のウインターテスト。チームの前に現れたハミルトンは「これまで見たことがない最高のルイス・ハミルトン」(ウォルフ)となって帰ってきた。
「あの日、トトの家で行われたミーティングがあったからこそ、いまの僕たちがあると言っても過言ではない。僕を信じてくれたみんなに感謝したい」(ハミルトン)
4度目の戴冠は、ハミルトンとメルセデスにとって、当然の帰結だった。