プロ野球亭日乗BACK NUMBER
一方的な展開は「1番の差」なのか。
明暗分かれたSB柳田とDeNA桑原。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/11/01 12:10
シーズンOPS1.016の柳田を切り込み隊長で使える。ホークスの陣容の分厚さを象徴する起用法だ。
怪我が再発した場合の危機管理が功を奏した。
柳田はシーズン終盤9月26日の日本ハム戦で右脇腹を痛め、一時はスイングがまったくできずにポストシーズン出場が危ぶまれた。しかし楽天とのクライマックスシリーズのファイナルステージ第5戦で電撃復帰。ここでも1回の第1打席で遊撃内野安打を放って先制のホームを踏んでいる。
レギュラーシーズンでは3番を打つことが多かった柳田を、1番で起用したのには理由があった。
「もし試合中にケガが再発して出場できなくなったら、代わるのは城所(龍磨外野手)。そのとき3番だと、どうしても打線が弱くなる」(達川光男一軍ヘッドコーチ)
故障上がりを考慮した危機管理だったわけだが、これが日本シリーズという舞台では逆にハマったわけである。
「相手にダメージを与えられる」1番打者。
レギュラーシーズンとは違った緊張感に包まれるシリーズ。どの先発投手も慎重になる立ち上がりに、いきなり一発のある柳田が打席からプレッシャーをかける。しかも1、2戦ともいずれも詰まらされた打球だったが、それを強引に安打にしてしまった。スイングスピードの速い柳田ならではの凄技だった。
ギータはまさにただ単なるリードオフマンというだけではなく「相手にダメージを与えられる」1番打者なのである。
「たまたまですよ。一戦一戦、気持ちは変わらない。もっともっと打ってピッチャーを助けたい」
第4戦にはシリーズ新記録がかかる柳田は、こう語ってバスに乗り込んでいった。