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「デスパイネがいること」が真骨頂。
SB、チームとフロントで掴んだ1勝。

posted2017/10/29 12:00

 
「デスパイネがいること」が真骨頂。SB、チームとフロントで掴んだ1勝。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

先制タイムリーを含む3安打でDeNA投手陣を完全に凌駕したデスパイネ。指名打者の使える試合は今後も彼が焦点になりそうだ。

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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Naoya Sanuki

「要求通りのインハイのストレートでした」

 DeNAの井納翔一は少し尖った口調でその1球を振り返った。

 19年ぶりに駒を進めた日本シリーズの大舞台。ポストシーズンでの無類の強さを買われて先発に抜擢された右腕だったが、初回、いきなりピンチを招いた。

 先頭の柳田悠岐外野手に内角のスライダーを詰まりながらもしぶとく中前に落とされ、送りバントで1死二塁。そこで打席に迎えたのがアルフレド・デスパイネ外野手だった。

 初球は135キロのスライダーが外角に決まってストライク。そして嶺井博希捕手が体をグイッとデスパイネの方に寄せてミットを構えた。

「内角でいけると思った」

 初球の外角の残像を生かしてインハイで詰まらせる。嶺井の思惑だった。そのミットに向けて、井納も145キロのストレートを、ほぼ思った通りに投げ込んだ。

 しかしその1球をデスパイネのバットは痛烈に弾き返した。芯でとらえたライナー性の打球が左翼線に弾む、先制のタイムリー二塁打を放ったのである。

「打ったのはストレート。コンパクトに振って自分の仕事をすることだけを考えた。自分の役割は走者を還すことだからね」

 試合後、デスパイネは事もなげにこの一打席を振り返った。

むしろ、失投ではなかったことが重かった。

 井納にとっても、これは失投ではなかった。狙った通りに、狙ったボールを投げ込んで、ボールの力がなかった訳でもない。だが、それをあっさり打たれた。むしろ失投でなかったことが重かった。クライマックスシリーズで強力広島打線をほぼ完璧に封じ込めて来た自信を胸に臨んだ頂上決戦。だが、デスパイネのこの先制の一打は、DeNAバッテリーの心を折るのに十分だったかもしれない。

 ソフトバンクが2点差に迫られた直後の5回の猛攻も、この助っ人のバットが口火だった。

 先頭の2番・今宮健太内野手が四球で出ると、すかさずデスパイネの3球目に走る。これが嶺井の悪送球を誘って一気に三塁まで進んだ。そしてカウント2ボール2ストライクからの6球目、中途半端に落ちきらなかったフォークをバットの先っぽで拾うように、今度は中前に運ばれてソフトバンクに4点目が入る。そこから怒涛の攻撃でこの回一挙7点を奪って勝利を決めたのである。

【次ページ】 ソフトバンクの強さばかりが目立った第1戦。

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