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金本監督の言葉使いが変わった年。
ニヒルで抑制的な「良き上司」に。
text by
増田晶文Masafumi Masuda
photograph byNanae Suzuki
posted2017/10/26 07:00
1年目よりも金本監督のメディア露出は大きく減った。しかし自らのスタイルを確立した今年の方が、より「らしい」シーズンだった。
岡崎太一は「けっこう重かった」。
一方でうれしい誤算があった。地味な存在だった俊介が大爆発したのは交流戦。5月30日、31日のロッテ戦で勝利の立役者となる。
「昨日は盆と正月が来たな。今日は誕生日とクリスマスか」
控え捕手の岡崎太一も連日躍進してみせる。
「今日の活躍が生涯最後にならないよう頑張ってほしい」
金本一流の表現で褒めた翌日も岡崎は殊勲。
「太一の人生、変わってきましたね」
この日の岡崎はプロ初サヨナラ打、迎えた金本の胸に飛び込んだ。金本、歓喜雀躍する。
「抱きついてきましてね、けっこう重かった」
たまにグチやボヤキがこぼれても、力点は置かない。
とはいえ、今年の金本監督の基調はクール。大局を見据えて冷静にチームを見つめていた。
「(上位チームは)全然関係ない。何にも気になっていない…普通に続けていけば、大崩れしない実力を持っている。後は若手の経験」
年間を通じ、金本は冷静な表情で誠実に戦況を語っていた。たまには、グチやボヤキもこぼれるが、そこに力点を置かない。殊勲選手を褒めても、勝利に酔ったりしない。
ニヒリズムすら漂うコメントも目立った。
「これも試合ですわ」
「(広島のマジック点灯に)もうええやん。毎回毎回、ついたじゃ、消えたじゃって」
だが、広島との「差」をいちばん痛感していたのは金本だろう。8月3日、広島に追いつかれドロー、この時点で自力優勝はなくなった。それでも、金本は阪神の力量を的確に把握し、広島に負けなかったことを評価している。
「(普通はあそこで)一気にひっくり返されるか、延長に入ってもサヨナラ喰らうか。(敵地での)3連戦はよくやったなというのが正直な感想ですね」