野球のぼせもんBACK NUMBER
ホークス“突破0%”覆した無安打男。
達川コーチの城所起用という大博打。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKyodo News
posted2017/10/25 07:00
城所、中村晃……MVPの内川、復帰の柳田らの陰に隠れるが、ソフトバンクの陣容の厚さを象徴するCSとなった。
報道陣から失笑すら起きた城所が大活躍。
今季レギュラーシーズンで歴代5位の94勝を挙げた戦いにおいて、この陣容で戦ったのはただの一度もなかった。ましてや城所は2試合出場で3打数0安打の成績しか残せていない。
試合前のプレスルームでは失笑が起きていたし、筆者も正直、首をかしげるしかなかった。
だが、なんと、その城所が打って守っての大活躍を見せたのである。
初回はきっちり送りバントを決めて早々の逆転劇を演出。第2打席では則本昂大から右翼線二塁打。その後の内川聖一の3ランにつなげた。続く3打席目も則本から左翼線二塁打を放ってみせた。守備では5回、先頭ウィーラーの左中間最深部への大飛球をスライディングキャッチ。この回にアマダーが同点2ランを放っており、城所のスーパープレーがなければ、ホークスにはさらに悪い展開が待っていたはずだ。
この3戦目は、5対5で迎えた8回裏に中村晃が勝ち越し2ランを放った。そのヒーローも「キドさん(城所)が活躍して、チームのムードが明るくなった」と証言した。
今年のCSは、ファーストステージからイーグルスの梨田采配がズバリ当たっていたが、そのお株を奪う形での勝利。2勝2敗のタイに戻しただけではない見えない力が、この時のホークスにはもう存在していた。
「大失敗もするけど大成功もするらしいじゃないか」
唐突に思えた城所の起用。じつは達川光男ヘッドコーチが進言したものだった。
「去年の交流戦でMVPを獲ったんじゃろ? すごい大失敗もするけど大成功もするらしいじゃないか」
大博打である。
しかも丁か半かの勝率5割とは程遠い、万馬券級の勝負に打って出た。
「0%」をひっくり返すには、小さな奇跡を積み重ねて、大きな奇跡を作り上げるしかない。
その勝負に、ホークスは勝ったのだ。