野球のぼせもんBACK NUMBER
ホークス“突破0%”覆した無安打男。
達川コーチの城所起用という大博打。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKyodo News
posted2017/10/25 07:00
城所、中村晃……MVPの内川、復帰の柳田らの陰に隠れるが、ソフトバンクの陣容の厚さを象徴するCSとなった。
かつての首位打者・長谷川も「やってやろう」。
第4戦では長谷川勇が貴重な仕事をした。2回、先制タイムリー。このCSでホークスが初めて先に点を取った。相手先発はやはり難敵の岸孝之だったが、勝ちパターンに持ち込めば、やはりホークスは強かった。
もちろん、ホークスは選手層がぶ厚く、他球団ならレギュラー級と呼ばれる選手がゴロゴロいる。城所と長谷川勇はまさにそうだ。
長谷川勇は4年前に首位打者に輝き、大台に迫る198安打で最多安打も獲っている。だが、今季は23試合出場でわずか8安打に終わっていた。
長谷川勇が言う。
「あの試合前に、(長谷川勇、城所、本多の)3人で『やってやろう』という話をした。シーズン中はずっと二軍にいた。この試合からレギュラーをまた奪ってやるという気持ちで試合に臨んだ。だから違和感もなく、すっと入ることが出来たと思う」
選手会長でもあるベテランがその姿勢を見せる。思えば、今季は故障者続きだった。そのたびに出番が回ってきた選手が活躍した。6月には福田秀平が逆転サヨナラ弾を放ち、4番に起用された江川智晃がタイムリーを打った。明石健志や川島慶三、高田知季もレギュラーが確約された立場ではないが、欠かせない戦力だった。
心と体の準備を整える。それがホークスに強さでもある。
電撃復帰の柳田もチームの空気が打たせた。
王手をかけた第5戦には柳田悠岐が電撃復帰し、1番スタメンでいきなりヒットを放ち先制のホームを踏んだ。ダメ押しとなるタイムリーも放った。柳田の天才的実力は疑うまでもないが、チームを包む空気感が打たせたヒットでもあった。
長丁場だったレギュラーシーズンと同様に大接戦を乗り越え、最後は圧倒的な強さを発揮したホークス。まるでシーズンの縮図のような5試合を戦い、勝ち上がった。
「とにかく日本一になること。この1年間強い思いを持ってここまで来たので、みんなで一つになって日本一をめざし、相手のチームに負けない気持ちを持って目指していきたい」
改めて固く誓った工藤監督。日本一奪回まで、勝利はあと4つ。