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岡田武史と南場智子が語る
スタジアムという場所の特権性とは。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byIshizu Daisuke
posted2017/10/05 11:30
日本のスポーツ界を大きく変える動きを野球界、サッカー界で見せている2人の経営者。今後の展開が楽しみだ。
スポーツでお金もうけをしてはいけない、という風潮。
岡田「一つひとつの細やかなサービスは大切。うちはそんな立派なものはできないけど、僕は自分の目で見て、確認してきたつもり。たとえばバーベキューしながら試合を観戦して楽しんでもらうピクニックシートの間隔をどうするかという話になったとき、僕はそこに行って実際に座ってみて『これぐらいの広さがあれば大丈夫じゃないか』と納得できた。お客さんの立場になって考えるように意識している。スポーツビジネスってやっぱりスタジアムを満杯にするところから始まると思うから」
南場「スポーツでお金もうけをするのは良くないという風潮のあるところが、(日本で)スポーツが大きく発展していかない理由だなと思っています」
岡田「そのとおりだと僕も思う。目に見える資本じゃなくて、信頼とか共感とか目に見えない資本がお金を生むような社会にならなきゃならないって感じている。みなさんに夢や笑顔を売りますよって」
南場「家族やお友達、恋人と一緒に時間を使う場ですからね」
岡田「僕のイメージにあるのは祭り。欧州にはドゥオモ広場とか、人々が集まれる場所がある。日本でも神社、仏閣がその役割を果たしてきたと思うけど、社会が大きくなったらそういった広場がない。そうなればいいなという思いもこめて、スタジアムビジョンというものをつくった」
南場「それは素晴らしいことですね」
岡田「ここに集まるすべての人々に、心震える感動、心躍るワクワク感、心温まる絆が生まれるスタジアム、心の豊かさを大切にするスタジアムを、とこけら落としのオープニングでスピーチした。だから極力、ルールは設けていませんよ、と。柵は置いていないので、みなさん日本一モラルの高いスタジアムにしてくださいって。実際、素晴らしい雰囲気だったし、楽しんでいただけたかなとは思う」
南場「横浜スタジアムで言えば、DeNAという会社はこれまでインターネットサービスを主に展開してきました。だからお客さんが喜んでくれても、その顔を実際に見ることができなかった。それがプロ野球界に参入して、喜んでくださるお客さんの顔を見て、涙が出ちゃったことがあったんです。人を喜ばせるってこんなに感動的なんだなって思うことができました」
岡田「(フェイスブックの)いいね! とは違う。僕もお客さんの喜んでくれる姿を見て、やっぱり鳥肌立ったから」