球体とリズムBACK NUMBER
クライファート愛弟子に横浜で直撃。
マルティノス、Jリーグってどう?
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/09/16 07:00
身体能力を生かしたプレーを見せると同時に、キュートな表情も浮かべる。キュラソー出身というバックボーンを感じさせるマルティノスの陽気さは魅力的だ。
日本のパスワークや連携は見事だ。だけど……。
──楽しそうだね。では、君のように色々な国でフットボールをしてきた選手に、日本のリーグはどう映っている?
「競争力の高いリーグだと思うよ。特にパスワークや連携は見事だと思う。アジアの他国が見習おうとしているのもわかるよね。でもパスで崩すだけではなく、時にはファンタジーも必要だと僕は考えている。ひとりで仕掛けて相手の守備を1枚でも剥がすことができれば、チャンスは大きくなるわけだから。そしてお客さんを楽しませることもできる。でも、日本人選手には単独突破を好む選手が少ないから、僕がプレーできているのかもしれないけど」
──こうすれば、もっと良くなるだろうなって思うことはある?
「ちょっと走り過ぎかな。もちろん走ることはフットボールの基本だし、ハードワークは良いことなんだけど、もう少しクレバーに動けば、もっと良くなるんじゃないかな。ヨハン・クライフも『周囲と最適な距離を保って、連動することが重要だ』と言っていたしね。それから、ジムで筋肉を鍛える選手が少ない気がするな。ここでは筋肉系のトラブルが多い印象だけど、それは適切にトレーニングしておけば、防げることでもあるんだ。
あと、国外に挑戦しようとする選手が少ない気がする。あまり野心がないのか、現状に満足しているようで、ちょっともったいないと思うな。もちろん人それぞれだし、日本はとても居心地の良い国だから、どちらが正しいとは言わないけれど、せっかくプロになれたのなら、ひとつの国にとどまらずに様々な文化や生活を経験したほうが、人生は豊かになると僕は思う。人生は一度きりだから、僕はフットボールをツールにして世界を見て、チャレンジすることを選んだ」
──では、そのうちにまたどこかへ?
「実は昨シーズンが終わった頃、韓国行きの話があったんだ。でも僕は日本が大好きだから断ったよ。日本をもっと知りたいし、ここでもっと活躍したいからね」
この言葉に安心したサポーターも多いだろう。「日本のファンはすごく礼儀正しいよね。それは悪いことではないけど、もっと近づいてくれてもOKだよ」と言っていたので、機会があれば、いつもより少しだけ勇気を持って声をかけてもいいかもしれない。きっと素敵な笑顔で応じてくれるはずだ。