酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
イチローの誰も知らない大記録。
24年前の「46試合連続安打」。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2017/09/07 11:00
「イチロー」の登録名となった'94年に大ブレークを果たした。しかし「鈴木一朗」の頃、二軍でその才覚は発揮されていたのだ。
昇格後に出場したファームの試合でヒットを重ねた。
さて、イチローの二軍での大記録は、誰も知らないうちに始まっていた。
6月20日、広島市民球場でのウエスタン・リーグ広島戦、1番左翼で出場したイチローは、足立亘から2安打、これを皮切りに12試合連続安打を記録した。前述した通り、7月11日に一軍に呼ばれたから、この記録は継続している。
なお7月17日には東京ドームで行われたジュニアオールスターゲームで、8回に同期、同学年の近鉄、中村紀洋の代打で打席に立ち、大洋の有働克也の2球目をライトスタンドに放り込み、MVPに輝いている。イチローはこの時の賞金をすべて福祉施設に寄付。これも異例と言われた。
以後もイチローは一軍で主として代走、守備固め、ときどきスタメンという感じで起用されるが、その間も暇があれば二軍の本拠地・神戸第二球場の公式戦に出場していた。
7月24日ダイエー戦、8月12日阪神戦、8月23日近鉄戦、9月7日広島戦と、鈴木は飛び飛びで出場した4試合ですべて安打を打っている。これもできそうでできない記録だ。
首位打者、ビッグホープ賞という初タイトル獲得。
こうして1992年は、二軍で16試合連続安打を継続してシーズン終了した。
一軍では40試合95打数24安打0本塁打5打点3盗塁 打率.253。
二軍では58試合238打数87安打3本塁打16打点10盗塁 打率.366。
規定打席243を辛うじてクリアして首位打者を獲得。将来有望なファーム選手を表彰するビッグホープ賞も受賞した。イチローにとっての初タイトルだ。
翌1993年には有望株の一人となる。オープン戦では2月27日の糸満での中日戦から出場。3月17日の神戸球場の巨人戦では、高校時代から互いに意識しあった1歳下の松井秀喜と初対戦している。オープン戦16試合で44打数12安打1本塁打5打点1盗塁の.273を残し、開幕一軍の切符を手にした。