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女子バレー荒木絵里香が語った覚悟。
アスリートとして、1人の母として。
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byKiichi Matsumoto
posted2017/09/05 07:00
長年にわたって女子バレーのキーマンとなっている荒木。自身4度目となる五輪に向けて、日々努力を続けている。
打数は増えてきた、まだまだまだまだですけど(笑)。
全日本女子にとって積年の課題であったミドルの攻撃力強化。
中田監督も就任直後から「いかにセッターがミドルを使えるか」を大きなポイントとして打ち出してきた。実際に試合中もセッターやミドルの選手に対してだけでなく、打数がサイドに偏っていると見れば「もっとミドルを使って行こう」と全体に共有させる。実際にアジア選手権ではセッターの佐藤美弥と冨永こよみが互いの長所を生かしながら、合流直後の荒木も積極的に使い、荒木自身も一定の手応えを得ることができた、と振り返る。
「2人ともすごくいい状態で使ってくれるので、自分は打つ前の準備さえしっかり意識してできていれば、あとは打ちたいところにトスが来る。極端な話、跳んで、腕を振ったら打っていた、みたいな感じ。前よりは打数も増えてきたのかな、って思います。まだまだ、まだまだまだまだですけど(笑)」
夜、一緒に寝られないのは寂しいけれど……。
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合宿で離ればなれの間、娘とは毎晩テレビ通話で顔を見ながら今日あった出来事を話すのが日課だ。荒木にとっては癒しの時なのだが、3歳になった娘にも自我が芽生え、最近は、少し傷つくこともある。
「おもちゃに夢中になっているフリをして無視するんです。一緒にいられないことが寂しいから、彼女なりの主張ですよね。そういう姿を見ると、すごく胸にグサッと刺さるんですけど、だからこそ中途半端なことはできない、ブレちゃいけない、って思うんです」
日本の女子バレーボール選手はまだ、出産後も第一線でプレーし続ける選手はほとんどいないのが現状で、荒木は確かに稀な存在ではある。だが、少し広い世界に目を向ければ、仕事をしながら子育てをし、毎日保育園に送り迎えをするたびに寂しさを感じたり、スポーツだけでなく音楽や芸能活動など時間も不規則な仕事で、荒木の合宿時のように離ればなれで過ごさなければならない親子もいる。
「自分だけが特別じゃない。夜、一緒に寝られないのは寂しいけれど、でもだからこそ、みんなが納得いく成果を残せるようにやろう、って決めています」