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松坂世代「その他大勢」がトップに。
和田毅、思考派左腕というプライド。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byTadashi Shirasawa
posted2017/08/12 09:00
端正な顔立ちとスタイルは早大時代から変わらない。36歳を迎えてもなお自らを研ぎ澄ますからこそ、和田はプロの一線級で戦えている。
メジャー帰りの時点で懐疑的な向きは少なくなかった。
昨年は見事な復活劇だった。
5年ぶりに米球界から復帰したシーズンで、いきなり15勝をマークして最多勝を獲得。1人で貯金を10個も作って最高勝率と、2つの投手タイトルに輝いた。
メジャーでは成功をつかめなかった。'12年の渡米直後に左肘故障が発覚し、トミー・ジョン手術を受けた。オリオールズでは出番がなく、カブスに活躍の場を求めるも居場所はほとんどなかった。4年間で5勝のみ。肩に異常を訴えた時期もあった。果たして、日本球界に帰ってきたところで、どうなるものかという懐疑的な目も、当初は少なくなかった。
しかし、和田毅は、和田毅のままだった。
〈変わらないね〉
ホークスに復帰後の和田を見た人は必ずそう表現した。フォームもスタイルもそのまま。シーズン前には「和田はやる」という声の方がすでに大きかった。
「昔だったら真っ直ぐ一本で押していましたが……」
しかし、変わらないという言葉に、和田は少なからず抵抗した。
「変わっていると思いますよ。昔だったら真っ直ぐ一本でゴリゴリ押していましたが、今はツーシームやカットボールを上手く使って球数を減らしていこうと思っています」
ボールを動かすのはアメリカで覚えてきたスタイルだ。メジャーの強打者はぎりぎりまで引きつけて打球を飛ばしに来る。芯を外す球種がなければ通用しないと思い習得した。日本復帰後も武器としてそのまま使用したが、今年はさらに右打者の内角へのツーシームを新たに投げ始めた。また、今季に向けてはカーブも改良した。「浮き上がってピュッと落ちる」軌道になった。
和田は言葉を継ぐ。
「僕の一番の武器はストレート。だけど、いつか空振りが取れなくなる時が来ると覚悟をしています。いつ、そうなってもいいように、僕は準備をしているんです」
予防線を張る。自信も手応えも確かにあるうちから準備にとりかかる。
「実際にそうなってしまった時に慌てても遅い。まあなるべく、そんな日が来ないよう、もしくは1日でも遅らせるために、若い時から先のことをずっと考えながら練習を積んできたつもりです。だからスタイルはなるべく変えたくないと思いながらやってきました。その意味では僕は変わってないのかな。いや、変わっている気もするし。うーん、分からないですね。でも、分からないということは、自分の根本は昔から変わっていないということかもしれません」