沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
1頭6億円のセリ値がつくご時勢。
1000万円台で10億稼いだ孝行馬は?
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKyodo News
posted2017/07/29 08:00
強烈な末脚でGI2勝を挙げたジャスタウェイ。セリでは高額ではなくても名馬へと駆け上がるプロセスに、ロマンがあるのだ。
「10年、20年のうちに大物が1頭でも出ればいい」
ディナシーは、まだ自分の価格ぶんの「経済効果」を生み出していないが、「10年、20年のうちに一族から大物が1頭でも出ればいい」という考え方だとすれば、現時点で「損な買い物だった」と言い切ることはできないのかもしれない。
前記2頭に次ぐ、日本のセリ史上3位の高額馬は、2004年のセレクトセール(同年は当歳部門のみ)で4億9000万円で落札されたザサンデーフサイチ(牡、父ダンスインザダーク、母エアグルーヴ)だ。
JRAで41戦して3勝。獲得賞金は7196万5000円。11歳になった2015年の3月まで現役をつづけ、同年、種牡馬として「第二の馬生」をスタートさせた。2017年度の種付料は受胎確認後30万円。2015年は7頭、2016年は8頭に種付けしただけだが、5億円近い値がついた血統背景と立派な馬体から、ポンと活躍馬が出ても不思議ではない。最初のオーナーは途中で表舞台から姿を消したので、個人の収支を計算することはできないが、いわゆる「馬主経済」としては、大きなマイナスを記録したままである。
今年のセレクトセールでは3億7000万円の値が。
そして第4位の高額馬は、今年のセレクトセール当歳で3億7000万円の値がついたドナブリーニの2017(牝、父ディープインパクト)で、落札したのはクラブ法人事業に新規参入する(株)DMM.com。ジェンティルドンナの全妹という超良血だ。
第5位、2011年のセレクトセール1歳で3億6000万円で落札されたラストグルーヴ(牝、父ディープインパクト、母エアグルーヴ)は1戦1勝で引退。獲得賞金は600万円にとどまった。しかし、繁殖牝馬として3頭を産み、ラストグルーヴの2016(牡、父キングカメハメハ)は、今年のセレクトセール1歳で1億2500万円の値がついた。
第6位は、1989年の旧2歳8月市場で3億5000万円で落札されたサンゼウス(牡、父トウショウボーイ)だ。庭先取引が中心だった時代でも、トウショウボーイ産駒の牡馬はセリに出すことを義務づけられていたため、高額取引馬には何頭ものトウショウボーイ産駒がいた。サンゼウスはJRAで2勝しかできず、獲得賞金は2360万円にとどまり、種牡馬としても目立った産駒を出すことはできなかった。