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“エル・ロコ”ビエルサが変わった?
リールの監督就任騒動と、その後。
text by
クリストフ・ラルシェChristophe Larcher
photograph byBernard Papon
posted2017/06/19 11:00
監督就任の席でリールにおける“野望”を語り尽くしたビエルサ監督。とりあえず1年目の目標はリーグで5位以内という現実的なものだ。
敵だけでなく味方の選手まで疲弊させたビエルサ。
とはいえこの一連の経緯については、ヴァンサン・ラブルン元マルセイユ会長へ電話をかけて、ビエルサとの間に何が起こったのかを聞かずにはいられなかった。
ビエルサ就任発表の際、満面の笑みを浮かべながらロペス会長は目標を明確に語っていたのだ。
「できるだけ早く結果を得たい」と。
これはまさにマルセイユ時代のラブルン会長の言葉と同じものだ。
またロペス会長は、スペクタクルなプレーもの実現も不可欠であると付け加えている。
その点については……電話取材に応じてくれたラブルンも保障していた。
'14-'15年シーズン、ビエルサ率いるマルセイユは終盤に4位に転落するまで、リーグを支配し続けた。フランスサッカー界は、強度の高いスプリントでスピーディにボールを前に運ぶ輝きに満ちたプレーの数々を発見したが、それは対戦相手ばかりかマルセイユの選手たちまでをもボロボロに疲れさせたのだった。
来季に向けて10人以上の補強が見込まれているが……。
マンダンダはじめエンクル、メンディ、インビュラ、アイェウ、パイエット、トバン、ジニャックといった当時のマルセイユの顔ぶれを思い起こせば、それが今日のリールのそれとは比較にならないほど豪華であったことに、ロペス会長もすぐに気づくだろう。現在のリールの陣容では、来季の目標であるトップ5入りもおぼつかないかもしれないのだ。
とりあえず、来季に向けては10人以上の補強が見込まれている。その多くは若い選手たちで、ふたりの人間が主に関わっている。
ここでもビエルサは力を発揮し、若手の発掘では定評のあるポルトガル人のルイス・カンポスを頼りにしている。彼が信頼を置くもうひとりが元FCバルセロナ副会長のマルク・イングラで、今後のリールを'14-'15シーズンのマルセイユにも匹敵する戦闘集団に変身させるための切り札になろうとしている。
「2年だ」
使命達成までの期間を問われたビエルサはそう答えている。それでも彼にとっては、長いサイクルと言えるのだろう。
他方で彼は、ベンチの前にこれまでのようにアイスボックスを置くかどうかは、今のところ明言を避けているが……。