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“エル・ロコ”ビエルサが変わった?
リールの監督就任騒動と、その後。
text by
クリストフ・ラルシェChristophe Larcher
photograph byBernard Papon
posted2017/06/19 11:00
監督就任の席でリールにおける“野望”を語り尽くしたビエルサ監督。とりあえず1年目の目標はリーグで5位以内という現実的なものだ。
監督辞任に至るまでの騒動に、政治的圧力までも。
さらに、自らの我がままでクラブにこれまで無茶日程をおしつけておきながら、元アルゼンチン外務大臣の兄にあたる人物が、一連の経緯に対しクラブに圧力をかけてきた。その圧力に対し、クラブの誰もが……ヴァンサン・ラブルンやマルガリッタ・ルイドレフュス(=ロベール・ルイドレフュス未亡人。ヨーロッパアディダス社長でOMのオーナーであった亡き夫の遺志を継ぎ、マルセイユのオーナーを務めている)ですら抵抗はできなかった。
リールはそこも同じで、いつも“天啓に満ちている”監督はこれまで同様に、新しく指揮を執ることになるはずのクラブに対する調査と分析から仕事を始めた。
数週間をかけてクラブのU-19世代の育成を分析し尽し、チームに関するあらゆるディテールを検討してすべてを白日の下に晒したのだった。
そのうえで彼は、選手のためのバンガローと娯楽ルーム、食堂の建設をリールの経営陣に指示した。
ロペス会長は自らをビエルサの「崇拝者」と称する。
とはいえ今回の就任は、マルセイユのような急転直下ではなかった。
発表されたのは2月19日で、翌日には『レキップ』紙が「ビエルサ、すでに現地に」と大々的に書きたてている。またロペス会長もほどなくして真相を明かした。
「昨年の夏から合意に達しており、すでにマルセロは多くの決定に関与している」と述べたのだった。
ふたりの邂逅は、ビエルサがアスレティック・ビルバオの指揮を執っていた2012年に遡る。
その後も両者はコンタクトを取り続け、再び接近したのはその世界的な知名度にもかかわらず、ビエルサが仕事を失いフリーとなった去年秋のことであったという。
ロペス会長は自らをビエルサの「崇拝者」と称してはばからず、彼のプレーに対する理解や、好きな映画、国際状況の分析などに理解を示した。