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“エル・ロコ”ビエルサが変わった?
リールの監督就任騒動と、その後。
posted2017/06/19 11:00
text by
クリストフ・ラルシェChristophe Larcher
photograph by
Bernard Papon
マルセロ・ビエルサが、フランス・リーグアンのリール監督に来季就任することを、皆さんはご存じだろうか。彼自身にしか理解できない独自のロジックで、突然の監督辞任を含め周囲からは奇行にしか見えない行動を繰り返すビエルサだが、監督としての手腕は今も高く評価されている。
『フランス・フットボール』誌編集部でも“変人”として知られるクリストフ・ラルシェ記者が、ビエルサのフランスでのシーズン2を同誌5月17日発売号で展望している。新天地として選んだリールで、“エル・ロコ(奇人)”は何をやろうとしているのか。また、2年目のシーズンをわずか1試合戦っただけで辞めてしまったマルセイユでは、いったい何があったのか。
監修:田村修一
“エル・ロコ”ビエルサの新たな挑戦とは?
センセーションを呼んだマルセイユの突然の監督辞任からはや2年、アルゼンチンのサッカー導師は再びリーグアンのリールに復帰した。マニアックさは相変らずだが、環境的に恵まれた今のマルセロ・ビエルサは、マルセイユ時代よりもずっとリラックスしているように見受けられる。
それは視線の幾何学の問題だった――5月23日(火)、マルセロ・ビエルサはすっくと胸を張った。彼の視線はその日、LOSC(リール・オランピック・スポルティング・クラブ)練習場の記者会見場に集まった60人を超えるジャーナリストたちのそれとしばしば絡み合った。
ビエルサのメディアに対する姿勢の変化は、「話すときはまず微笑みを浮かべて、相手の目を見て話しなさい」という妻の《強い要望》によるものだった。当人の口から明瞭に語られたこの妻とのちょっとしたエピソードは、聞くものの笑いを誘った。トレーニング開始まであと4週間。マイクの前に立つ表情にも余裕が感じられる。
2014年のマルセイユでは違った。