話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
倉田、今野、井手口が光った10分間。
ガンバ3人衆は代表の中盤を変える?
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byNanae Suzuki
posted2017/06/11 09:00
豊富な運動量を生かしてボールの受け手となる倉田。そのダイナミズムはG大阪の選手と組むことで、さらに連動したものとなるはずだ。
3人が同時にプレーしたのはわずか10分間だけ。
井手口がピッチに入った瞬間からトップギアで走り回り、いい形でボールを奪えていたのは、ハリルホジッチ監督に尻を叩かれたのもあるが、そういう環境でプレーに入れたことが大きいだろう。
しかも3人が一緒にプレーしていたのは10分間だけ。この短い時間でゴールが生まれているのは単なる偶然ではない。
それだけに、この“ガンバユニット”をもう少し見たかった。
というのも彼らは、チームの縦に速く攻めるというチームのやり方に異なるエッセンスをもたらしてくれると思ったからだ。
井手口も倉田もまだ代表の常連ではないし、今野は監督の指示をしっかり守るタイプ。実際、今野はシリア戦でも従来のコンセプト通り奪ったら速く前にボールを出すプレーをしていた。それぞれが置かれた状況や性格を考えると、監督の考えと異なるプレーを意識的にするのは難しいかもしれない。
ガンバ伝統のパス回しを代表でも発揮していい。
だが、彼らだからできることもある。
たとえば、中盤でもっとボールを回してもいい。
それはハリルホジッチ監督お好みのプレーではないかもしれない。ただ全体の動きが緩慢だったり、流れが悪い時は強引に縦に入れても後ろが連動せず、前線が孤立してうまく攻撃につながらなくなってしまうシーンはこれまでも課題となっていた。
シリア戦の前半は、まさにその形になっていた。その状況こそ無理せずボールをゆっくり回して、自分たちのリズムを取り戻していくことが必要になる。
ガンバユニットは、それが得意なはずである。
伝統的にガンバの選手はボール回しがうまい。そこには個々の技術の高さがベースにあるが、同時にクラブの伝統として攻撃的なパスサッカーを標榜しているからでもある。彼らは普段からパススピードを高め、パスの精度を磨いてきた。
例えば、かつて明神智和が柏レイソルからガンバに移籍してきた時のことだ。パス回しの精度とスピードに驚き、その流れに乗るようになれるまで3カ月かかったが、それほどチームとしてパスを回して攻めることにこだわりを持っている。
さらに言えば技術の天才である遠藤保仁がチームにいることも大きい。彼から直接、色々なことを学べるのだ。