“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
堂安律「いやぁ、本当にうまいっすわ」
市丸瑞希はU-20の“隠れた天才”だ。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byFIFA via Getty Images
posted2017/05/30 07:00
イタリア戦での市丸。堂安との連係は「目を見ればすぐにできる」というほどの以心伝心ぶりだ。
堂安、初瀬、市丸の“ガンバ大阪トライアングル”。
反撃の狼煙を上げるべく、縦パスを狙い続けたという市丸。
「律が1点目を取る前あたりから、右サイドの連係が少しずつ上手く機能し始めていたんです。そこから上手くリズムに乗って、チーム全体でサッカーができるようになりました」
右サイドハーフの堂安と右サイドバックの初瀬亮、そして右ボランチ・市丸の“ガンバ大阪トライアングル”が、流れるようなプレーを展開し始めていた。
攻撃のリズムが生まれ始めたことで、左サイドも活性化し、22分に遠藤渓太の左クロスから堂安の反撃弾が生まれた。
そして、1-2で迎えた40分。
初瀬の縦パスを受けた堂安が、右からドリブルでカットイン。その姿を見た市丸は、スッと平行に距離を詰めて、堂安の選択肢を増やす。そのまま堂安の横パスを上手く引き出すと、身体を入れ替えて左足でミドルシュート。これはGKの好守に阻まれたが「ゴールの匂い」は濃厚に漂い始めた。
そして、冒頭で書いた堂安の同点ゴールのシーン。
この時、市丸と堂安の会話の中に、初瀬も加わっていた。市丸は一連の動きのファーストタッチの段階で、右サイドをオーバーラップしてくる初瀬の動きも捉えていたのだ。その初瀬の動きで堂安についていたマークの一枚が剥がされたことも、堂安がよりフリーで受けられる要因となっていた。
普段は寡黙だが、試合ではメッセージを出しまくる。
ミックスゾーンではいつも淡々とした表情の市丸。コテコテの関西弁で一切の飾り無く質問に答える市丸は、ピッチの上ではより雄弁になり、多くの選手にメッセージを送り続けている。
市丸によって操られる“ガンバ大阪トライアングル”と、内山ジャパンのアタッカー陣。この攻撃陣でコミュニケーションが成立した時、堂安のゴールのような試合を動かすスペクタクルなシーンが生まれるのだ。
「今はホンマに良い緊張感でやれているし、自信を持ってやれていると思います。それにボランチは基本フリーなので、ミスした方が恥ずかしいという感じですね」
次なるステージはいよいよ一発勝負の決勝トーナメント。
南米の強豪・ベネズエラ戦で、イタリア戦を越えるスペクタクルなシーンを生み出すべく、市丸瑞希はその足に多くの言葉を宿していくつもりだ。