「あれは完全に瑞希のパスが引き出してくれたプレー」

　堂安はあのシーンをこう振り返った。

「あの狭いスペースで、なおかつスピードを持って突破していくためには、パサーのそういうメッセージが無いと入り込めない。自分がボールを受けてから、『さあ、行こう』と前に出ていくのだと、遅くなってしまって必ずつぶされてしまうので。

　パサーがメッセージを込めたパスを出してくれて、ああやって“点”でタイミングが合ったときに、俺はもうスピードが上がっているので、ファーストタッチからバッと一気に前にいける。

　あれは完全に瑞希のパスが引き出してくれたプレーです。いやぁ本当に上手いっすわ、瑞希は天才ですね（笑）」

　イタリア戦で世界を震撼させ、一気にその名を日本だけでなく、世界に轟かせた怪物・堂安が語った天才・市丸瑞希。

　試合後のミックスゾーンで、「パスを出す瞬間、堂安選手の重心が前にいっているのが見えたの？」と市丸に質問すると、ニヤリと笑みを浮かべながら「ハイ！」と即答した。

「当然、常にスペースがどこにあるのか、誰がどういう状況にあるのかを見ながらプレーをしていますから」

なぜ当落線上ギリギリだった市丸が代表に選ばれたのか？

　市丸の最大の魅力は動きながらの状況判断の早さにある。

　攻撃時でも守備時でも、常に2手、3手先のことを考えている。だからこそ、彼は素早く動きながらの縦パスが非常に上手い。

　そもそも彼はこのチームにあってレギュラー的な存在ではなく、むしろU-20W杯メンバーの当落線上にいた選手だった。ボランチのレギュラーと目されていたのは原輝綺と坂井大将で、彼は3番目以下の存在。代表メンバー発表前には、MF神谷優太（湘南）と市丸のどちらかが入るだろうとは予想していたが、結局、市丸が選ばれた。

　内山篤監督は発表時に「市丸はオンの時のプレー精度がアジア最終予選で凄く高かった。ゲームを作るためのクオリティーを持っている」と、彼の「攻撃のスイッチを入れる能力」を評価してメンバー入りを決めたということだった。

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