八百長がスポーツ界からなかなか消えない理由。

　結局ブックメーカーの予想通り錦織は勝ったが、セット数はより倍率の低い2－0ではなく2－1。ファイナルセットは3つのマッチポイントをしのいでのタイブレークでの勝利という綱渡りだったから、肝を冷やした人も大勢いたことだろう。

　アンダーソンに勝ったあとは、これが初対戦となるミーシャ・ズベレフとの準決勝のオッズが早々に公開され、錦織が1.2倍、ズベレフが4.5倍と、アンダーソン戦よりも錦織勝利の確率が高いとされていたが、33位のズベレフに錦織は敗れ、“ギャンブラー”に利益をもたらした。

　自分の勝ち負けによって、自分とまったく無関係の人々が大損したり大もうけしたりしているというのは、そう気持ちのいい話ではないだろう。

　ところで、賭けの対象になっているのは勝敗やセット数にとどまらない。

　セットごとのゲーム数は当然のこと、最初の2ゲームだけのスコア、最初の4ゲームのスコア、最初の6ゲーム……紹介すればキリがないほど、子細に及ぶ。なんとなく聞いたことはあったが、ここまでとは知らなかった。

　賭けてみたくなる人の心理は自然で、そこに、八百長を持ちかける者、仲介する者、誘惑に屈する者があとを断たないのもやむなしという気さえ起きる。

では、全仏OPにおける錦織の優勝確率はいかほどか？

　それはさておき、やはりブックメーカーの予想が気になるのは全仏オープンだ。

　これを書いている時点では、まだ優勝者予想のみオッズが公開されている状態だった。

　開幕2日目の時点で、本命はラファエル・ナダル（世界ランク4位）で1.91倍。続いてノバク・ジョコビッチ（2位）で5倍、先週のジュネーブで優勝したスタン・ワウリンカ（3位）が11倍で3番手。王者アンディ・マレー（1位）と、本命のナダルをローマ・マスターズで破った期待の若手ドミニク・ティーム（7位）が13倍で並ぶ。

　ローマでマスターズ初優勝を遂げた20歳のアレクサンダー・ズベレフ（10位）が15倍で、そこから一気に倍率が上がって錦織（9位）が41倍だ。ファンマルティン・デルポトロ（30位）とジョーウィルフライ・ツォンガ（11位）が51倍と続く。

　昨年は陰の優勝候補とも言われた錦織の実績を振り返れば、決して高い評価とはいえない。

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