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初参戦から28年目のダービー制覇。
藤沢和雄調教師「思った以上に……」
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2017/05/29 11:30
かつて、調教師リーディングのトップは藤沢和雄の指定席だった。昨年も勝利数は矢作芳人調教師についで2位、その力に衰えはない。
「思っていた以上に時間がかかってしまいました」
前週のオークスで「大尾形」と呼ばれた尾形藤吉に次ぐ史上2人目の重賞通算100勝という金字塔を打ち立てた藤沢調教師にとっても、ダービーはこれが初勝利であった。
「いつかは勝てるかな、とやってきましたが、思っていた以上に時間がかかってしまいました。そんなにダービー、ダービーとやってきたわけではないのですが、この馬は、おばあちゃんもお母さんも(自分が管理して)よく知っていて、牧場にいたころから期待されていたので、嬉しいです」
レイデオロの祖母レディブロンドは、ディープインパクトの半姉である。5歳だった2003年6月の1000万下特別でデビューし、9月の準オープンまで5連勝。つづくスプリンターズステークスで4着に敗れ、わずか3カ月半の現役生活で引退という、珍しい形の競走生活を送った。その後はノーザンファームで繁殖牝馬となり、5頭の仔を産むも、2009年に11歳の若さで死亡した。
レイデオロの母ラドラーダはレディブロンドの2番仔で、父は、藤沢調教師が管理して2年連続年度代表馬となったシンボリクリスエス。「藤沢血統」と言うべきこの馬は、3歳だった2009年1月にデビューし、秋には500万下から準オープンまで3連勝するなど力を見せた。
クラシックの日程より、馬の成長に合わせる。
このラドラーダの2番仔がレイデオロである。昨秋の新馬戦から暮れのホープフルステークスまで3連勝し、年明け初戦となった皐月賞で5着となり、そしてダービーでGI初制覇を果たした。
ダービーでJRA通算1351勝、そのほか海外でもGI勝ちのある藤沢調教師が、これまでダービーを勝てなかったのは、本人のコメントからもわかるように、特に狙っていなかったからだ。
無理してまでクラシックの日程に合わせて馬を仕上げるのではなく、馬の成長に合わせてレースを使っていく、という方針だったため、古馬になってから活躍する管理馬が目立った。