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初参戦から28年目のダービー制覇。
藤沢和雄調教師「思った以上に……」
posted2017/05/29 11:30
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Yuji Takahashi
戦国ダービーを統一したのは、日本を代表する伯楽が管理する良血馬だった――。
3歳馬の頂点を決める第84回日本ダービー(5月28日、東京芝2400m、3歳GI)は、晴天のもと良馬場で行われ、先週のオークスと同じく、藤沢和雄調教師が管理し、クリストフ・ルメールが手綱をとるレイデオロ(牡、父キングカメハメハ)が優勝した。
なお、ルメールは2週前のヴィクトリアマイルも勝っており、これでJRAタイ記録の3週連続GI制覇となった。
18頭の出走馬が向正面に入ったとき、14番手につけていたレイデオロが動いた。馬群の外をスルスルと上がり、一気に2番手まで進出。ちょうど、前半1000m通過が1分3秒2とターフビジョンに表示されたときのことだった。
場内は、超スローな流れと、2番人気の有力馬が一気に動いたことに対する二重の驚きでどよめいた。
藤沢調教師から、戦術の指示はなかった。
「スタートして300mほどのところで遅いと思ったので、行かせることを決めた。2400mをこなせる自信があったので、心配はしていなかった」とルメール。
レース前、戦術の指示などはしなかったという藤沢調教師も、この「奇襲」に驚くことはなかった。
「スタートがよくなかったし、実況アナウンスでペースが遅いと言ったときだったので、いいタイミングだと思いました」
そのままペースは上がらなかったのだが、2番手につけたレイデオロは掛かることなく、そのポジションにおさまり、鞍上のゴーサインを待っていた。それができたのは、馬自身が賢いことに加え、普段から、ペースが急に変わったり、馬順が入れ替わっても動じることのないよう、調教で教え込んできた蓄積があったからだろう。
逃げ馬と差のない2番手をキープしていたレイデオロは、ラスト3ハロン33秒8の脚で力強く抜け出し、84代目のダービー馬となった。