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ルメールは馬の気持ちに騎乗する。
安田記念で、4週連続のGI勝利へ。
posted2017/06/03 08:00
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Yuji Takahashi
日本でもダービージョッキーになったクリストフ・ルメールが、有力馬イスラボニータ(牡6歳、父フジキセキ、美浦・栗田博憲厩舎)で、史上初の騎手による4週連続JRA・GI制覇を狙う。行く手には、距離を延ばしてきたスプリント王、5連勝中の新星、さらに最強世代の一角も立ちはだかる。
東京の春のGIシリーズを締めくくる安田記念(6月4日、東京芝1600m、3歳以上GI)には、上半期のマイル王決定戦にふさわしい強豪が揃った。
ルメールが2015年から日本の騎手になったのは、1頭の馬につづけて騎乗できるようにするためだ。ヴィクトリアマイルを勝ったアドマイヤリードこそ3度目の騎乗だったが、オークスを制したソウルスターリング、ダービーを勝ったレイデオロは、ともにデビューから全レースで手綱をとり、試行錯誤を繰り返しながら競馬を教え、結果を出した。
イスラボニータには、3歳だった2014年の天皇賞・秋で乗って3着となり、それから2年を経た昨秋の富士ステークスから主戦騎手となった。その富士ステークスも、次走のマイルチャンピオンシップも、つづく阪神カップも2着だったが、年明け初戦の前走、マイラーズカップでコンビ初勝利を挙げた。
ルメールは、馬の気持ちに乗って馬を操る。
イスラボニータにとって、'14年9月のセントライト記念以来2年7カ月ぶりの勝利であった。セントライト記念までは8戦6勝2着2回と勝ち切る力を見せていたのに、その後は馬が勝ち方を忘れてしまったかのようなレースがつづいていた。
「勝ったことで馬が自信をつけた。それは騎手も同じ」とルメール。こうした馬との一体感の持ち方も、ルメールの強さにつながっているように思う。
彼の強力な武器のひとつは、先週のダービーや、ウオッカに騎乗した2009年のジャパンカップのように、前に行くよう促してポジションをとりに行っても、勢いがつきすぎることなく、ピタッと折り合ってその位置におさめ、馬の力を溜める騎乗だ。それができるのは、精神論ではないが、小手先の技術ではなく、馬の気持ちに乗って操っているからではないか。