欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
小林祐希は本当に“面白いヤツ”だ。
3時間半にわたって語った4つの思想。
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byAFLO
posted2017/05/28 09:00
小林祐希は今季、クラブで3番目の出場時間を記録した。年下も多いクラブを、確かな存在感でまとめている。
航空会社、車、時計の大手企業に営業をかけた。
――事務所との契約発表直後、オランダの航空会社KLMとの契約が発表されましたね。
日本だけでなくオランダでも話題になったみたいです。オランダの企業が日本人を使うってすごいことだし、光栄なこと。これで、W杯に出ないといけなくなった。でも元はというと、事務所に航空会社、車、時計の一流どころに営業してくださいとお願いしたんですよ。
――様々なところに売り込んだんですね。
売り込んでくる人なんていないから“なんだ、この小僧”って思われるだけでも良いんです。ある企業からは「CLスタメン、もしくは欧州4大リーグで、クラブの規模で判断する。だけど上位5チームくらいで1シーズン通じて出場、もしくはW杯スタメンじゃないと世界で戦う男としては見做せない」との条件を出された。でも、そう言われるだけで立ち位置を知れるから良いんです。それができれば契約できるのか、と。
――何というか、ちょっと勇気の出る話です。
でも、人同士が惹かれたら、何でも起こりうる。KLMだってそう。俺は人に何を言われようが貫ける。25歳になってやっとそういう風になってきたなと。遅いなと思うんですけどね。
――ただKLMの話を聞いて、オランダ国外への移籍は今季じゃないのかと思いました。
移籍はどのタイミングでどうくるか、誰にも予想つかない。本当に直前までわからないんです。“来年残るよ”って言っている選手でもわからないし、逆も然りです。誰も予想できないからこそ面白いんですけどね。まあ、KLMにはオランダからいなくなる可能性があることも伝えてあります。オランダから世界へがテーマだからステップアップしたらそれもOKなんです。
<その2:今季を振り返って>
――では、この1年間を振り返ってください。
めちゃくちゃいい1年でした。俺は('16年6月までジュビロでプレーした時期を含めて)1年半休まず稼働しているけど、メンタルや考える力、振る舞いや言動が変わったみたいです。自分では気づいてなかったけど、周囲から「変わったね」と言われます。
――日本にいた時はどんなプレースタイルだったという認識なんですか?
日本にいたときは“自分が成長したい、うまくなりたい”という一心だった。いいプレーをするには他の10人の力が必要なのに、自分ばかり見ていた。そこに気づいたのが22歳くらいからで、それまでは全く試合出れなかった。監督やってるような大人は騙せないですね。こんなやつとやりたくないって思われたら終わりです。可愛がってやりたい、活きの良いのが好きっていう監督でも、他の選手が嫌がってたら使えない。
――そのエゴの強い考え方は、オランダにきて変わった?
俺が俺がという選手がこっちは多いから、逆に気を使って良いポジションとってる俺が目立つんですよ。だからラッキーで楽なんですよ、日本にいるより。日本にいるときは気を使えるやつが多いから、エゴなやつが目立つんです。だけどこっちはエゴが多いから、気を使える奴が目立つ。真逆。気を使えるやつが少なければ少ないほど俺は目立つ。エゴが全くいない日本、エゴばっかのオランダ。でもワンランク上のクラブでは、その両方の選手をうまく使っていますよね。