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ユーベが狙う3冠、実はCLより……。
コッパで待ち受ける伏兵・ラツィオ。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2017/05/17 08:00
高速ドリブルと精度の高いアシストパスを持つF・アンデルソン(左から2人目)は鉄壁を誇るユベントス守備陣にとっても脅威となるはずだ。
コンバートでセリエ最高のドリブラーの化けた男。
ネスタは、コンバートの成功例としてF・アンデルソンの名を真っ先に挙げる。
誰もが高いポテンシャルを認めるものの、昨季まで3トップの左ウインガーしかできなかったF・アンデルソンを、インザーギは新布陣3-5-2の右サイドハーフに置いた。
右サイドに移った“FA7”は、眼前に広大なスペースと視野を得た。窮屈な敵陣内から一歩引いたことで、自慢のドリブル能力が再び息を吹き返した。
F・アンデルソンが35節までに記録したドリブル成功数は、リーグトップの113回を数える。2位のMFゴメス(アタランタ)が79回だから、突出具合は明白だろう。高速ドリブルは、36節終了時点でリーグ1位タイにあたる30本のアシストパスを生んだ。
リーグ屈指のアシストマンがいるのだから、攻撃も加速する。
若きFWケイタは36節までに15得点を挙げたが、その内7ゴールは直近の4試合で連発したものだ。22歳のアタッカーは今、手がつけられない。
インモービレ「クローゼの穴を埋めるのは……」
それでも、やはり今季のラツィオの攻撃の屋台骨を支えてきたのは、昨夏加入したFWインモービレだ。
周囲に上質なラストパスの供給役を得た彼はフィニッシャーとしての本領を発揮し、コンスタントにリーグ戦で得点を量産。サンプ戦での2ゴールで、3年前にセリエA得点王を取ったときの自身最多得点記録「22」に並んだ。
ラツィオの新エースは、シーズンのクライマックスを前に充実の1年を振り返る。
「(昨季限りでチームを去ったFW)クローゼの抜けた穴を埋めるのは簡単なことじゃなかったし、ファンの心をつかむのにも苦労した。だから(この終盤のゴールラッシュに)自分たちが強くなった実感がある。こんな特別な1年は忘れようがないよ」
ローマ・ダービーとなったコッパイタリア準決勝では、ラツィアーレを興奮の絶頂に導いた。
2-0で先勝した1stレグでは、78分にカードの絶対主導権を握る2得点目を挙げ、2-3で敗れた2ndレグでも56分に貴重なアウェーゴールを決めた。