セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
ユーベが狙う3冠、実はCLより……。
コッパで待ち受ける伏兵・ラツィオ。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2017/05/17 08:00
高速ドリブルと精度の高いアシストパスを持つF・アンデルソン(左から2人目)は鉄壁を誇るユベントス守備陣にとっても脅威となるはずだ。
あまりに暴力的、悪質で知られるラツィオファン。
並大抵のことではラツィアーレたちを心服させることはできない。何しろ彼らはイタリアでも1、2を争うほどファナティックな応援熱を持つことで知られている。
今月4日の夜、永遠の都のシンボルである古代闘技場コロッセオ近くにかかる橋に、30人ほどの覆面姿の男たちが音もなく近づいた。
彼らはローマのユニフォームを着せた4体のマネキンを首吊り状態で晒しながら、横断幕を橋に掲げた。
「ロマニスタたちよ忠告してやる。夜は電気を消さずに寝ることだな……」
まるで押し込み強盗の犯罪予告ともとれる文言とショッキングな映像は、地元ラジオやSNSを通じて瞬く間に拡散。あまりに暴力的すぎるとしてスポーツ相以下政界が介入し、社会問題化した。
ラツィオのウルトラスは34節のダービーに勝った後も、一部がローマのトリゴリア練習場の玄関前に、大量のロウソクと葬儀案内を掲げ、「ローマよ、安らかに眠れ」と悪質なジョークで挑発行為をしでかしたばかり。
ローマ市内で、ラツィアーレは肩身が狭い。
一連の事件は、ラツィアーレの狂信的な一面をあらためて知らしめた。彼らの鬱屈した応援熱は、日頃から虐げられている鬱憤が暴走した形なのだろう。
ラツィオはれっきとした首都のクラブであるにもかかわらず、ローマ市内でラツィアーレだと名乗ることは少々勇気がいる。ロマニスタの数の方が圧倒的で、彼らはラツィアーレを親の仇のように毛嫌いする。
昔、ローマに住んでいたラツィアーレの友人は、自宅から遠く離れたラツィアーレが集う馴染みの床屋にわざわざ通っていた。気の置けない床屋ひとつ探すのも骨が折れるくらい、日頃から肩身の狭い思いをしている彼らが、憎っくきローマを下して4年ぶりにコッパ戴冠するチャンスを得たのだから、今季はさぞ溜飲を下げているのだろうと思う。
ラツィオは36節フィオレンティーナ戦に敗れ、連勝は止まった。
だが、17日のコッパ決勝戦を見据える指揮官インザーギは、先発7人を入れ替えるターンオーバーを施していた。ダメージは少ない。