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2度の戦力外を乗り越えた久保裕也。
松坂世代、後藤武敏との友情は続く。
text by
瀬尾泰信(Number編集部)Yasunobu Seo
photograph byYasunobu Seo
posted2017/05/11 07:00
梨田昌孝監督は「若い選手の手本に」と、久保を高く評価しているという。
久保は後藤に「オレは絶対あきらめない」と誓った。
横浜DeNAベイスターズの後藤武敏。
同級生の2人は昨季1年だけではあったが、チームメイトだった。
「久保とは、大学日本代表時代から仲はよかったんです。でも、どちらかというとあまり何も考えていないタイプなのかなと思ってました(笑)。普段はまったくそういうところ、見せませんから。でも実際ご飯とか一緒に行ったときに話すと、本当にちゃんと野球を見てる。野球を知ってる。技術のこととか、深ーい話が止まらなくなる。こいつ、すごいんだなあ、と素直に思うようになりました。やっぱり巨人であれだけの成績を残しているだけあるな、と」
2015年オフ、巨人を戦力外になった久保は横浜DeNAに入団するも、1年で再び戦力外になった。それでも、気持ちは切れなかった。後藤は久保の「絶対おれはあきらめない。チャンスがある限り頑張り続ける」という強い言葉を記憶している。しかし、チャンスはそう多く転がってはいなかった。
「1度目の戦力外と、今回は違いましたね。めちゃくちゃ、きつかったです」
トライアウトには「妙な緊張感がありました」。
戦力外の選手たちの「品評会」である、トライアウト。36歳で迎えた初の舞台、自分とひと回りも違う若い選手たちに混じっての登板は、なんとも不思議な感覚だった。
「妙な緊張感がありました。これですべてが終わってしまうんじゃないか、とにかく結果出さなきゃ、という……。ロッカーが他の選手と一緒なので、いろいろ話をしたりして。いや、僕から見るとすごくいい投手が多かったんですよ。なんで戦力外になったの? なんて話をしてました」
打者3人に対して、被安打1。
声は、かからなかった。
「正直、あんなにいい球を投げていた他の子でも、声がどこからもかかってないんだから、俺に声かかるわけないよな、と思いながら過ごしていました」