球体とリズムBACK NUMBER
強豪の激突、似た者同士の伏兵対決。
CLベスト8の4カードを大いに分析。
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byAFLO
posted2017/04/10 07:00
輝きを放つビッグイアーをカーディフの地で掲げるのはどのクラブか。欧州最高峰の戦いがクライマックスを迎えようとしている。
香川真司の復調によって選手層にさらなる厚みが。
43歳のトーマス・トゥヘル監督が束ねるドルトムントも昨夏、マッツ・フンメルス、ヘンリク・ムヒタリアン、イルカイ・ギュンドガンと、主軸を一挙に放出した。その影響からか、今季は不安定な結果が続いたが、世代屈指と謳われる戦術家は試行錯誤を重ねて、ひとつの形を見出したようだ。
4枚と3枚の最終ラインを使い分け、躍動感に溢れる若き才能たちが相手を畳み掛けるように攻め立てる。21歳のユリアン・バイグルがゲームを組み立て、18歳のクリスティアン・プリシッチと19歳のウスマン・デンベレが2列目から果敢に裏を狙う。
この2人とポジションを争う香川真司もリズムをつかみ始めており、選手層にも大きな不安はない。良い時期に調子が上向いているのは確かだが、勢いは相手にもある。違いを生み出すのは、6年前にモナコにローンで在籍していたエースのピエール・エメリク・オーバメヤンとなるか。
横綱のような強さを見せるレアルの懸念は、ロナウド。
<バイエルン対レアル・マドリー>
フットボール界をリードする二つの真のビッグクラブが相見える。過去3シーズンで2度の欧州制覇を誇るマドリーは、ジネディーヌ・ジダン監督のもとでCL史上初(チャンピオンズカップ時代を除く)の連覇に挑む。
1月に公式戦の無敗記録が40で止まり(それでもスペイン史上最長だ)、続いてスペイン国王杯から敗退した時は44歳のレジェンド指揮官に批判が集まったが、それも一時的なもの。
そのカリスマ性とフットボールを極めた両目によって、選手の力を十全に引き出すとともに適所に適材を配置。強さと気品をまとう横綱のような白い巨人は、難敵ナポリとの決勝トーナメント1回戦の前には苦戦も予想されたものの、結果的には格の違いを見せつけた。CLではグループ第2節を最後にゴールのないクリスティアーノ・ロナウドの状態は、やや気がかり。