「私がメダルを獲ったことには変わりない」

　メダリストに求めるのは勝利のみ。そう言わんばかりに世間の目が厳しくなる。「なに怪我してんの？」「奥原、終わったね」「相手が棄権したからメダルを獲れた」……。声が称賛から非難に豹変しようとも、奥原は自身の現在地を見失うことはない。そう、彼女は苦しみを選ぶ人間なのだ。

　ふふふ。口元を緩めてから「責任を取るのは自分ですからねぇ」と呟き、こう続ける。

「人の評価っていうか、捉え方はそれぞれなので。オリンピックの後は周りのいろんな声が聞こえてきましたけど、メダルを獲ったことには変わりないし。『自分の人生だし。周りを気にせず、私が主人公のドラマをちゃんと作って行けばいいんだ』って思えるようになったんです。そうしたら、メダリストの重圧とか、そういうものが軽くなりました。私、結構“強気キャラ”なんで（笑）」

　苦しい道でも、必ず終着点は存在する。

　中国オープン後、知人の紹介で自分に合う治療院と出会うことができた。全日本総合では、それまでの想いが去来し涙したが、気持ちが前向きだったことは間違いない。

　大会後はリハビリに専念した。右肩をはじめ、全身のパワーアップを図るべく、以前まで敬遠していたウエートトレーニングも「自分の体にあったメニューを組んでくれるので」と、精力的に行うようになった。

右肩は「まだ3割程度」でも気持ちは前向き。

　やるべきことはやった。所属チーム、日本代表のスタッフと相談しながらスケジュールを調整し、全英オープンを復帰戦に決めた。奇しくも、前年に快挙を成し遂げた大会。このめぐり合わせも、奥原をワクワクさせる。

　本音を言えば万全ではない。右肩は強打をしても問題ないほど回復しているが、パフォーマンスも含めればSSファイナルズや五輪などと比較して「まだ3割程度」だそうだ。実質、7カ月ほど本気でプレーできていないのだから無理もない。

　全英オープンは、今後への重要な試金石となる。ただ、大きな目標として見据えているのは、あくまでも2020年の東京五輪だ。「そこで自分が輝けるのかどうか？」。奥原は、それを常に念頭に置いている。

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