話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
中3日でガンバの3バックが突然進化。
“サッカーの神”が降りた遠藤保仁。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/03/07 11:00
開幕当初は運動量を心配された遠藤保仁だったが、柏戦では圧倒的な存在感を発揮した。それもフィジカル面で、というのが凄いところだ。
改めて能力の奥深さを誇示した遠藤に監督も驚愕。
潰しも非常に早かった。
「前線に入ったボールを潰しにいかないと相手のペースになってしまうんで、今日はそこがすごくよかった。自分はファール気味だったけど、そのくらいでないとダメだし、後ろがコンパクトにしてしっかりついてきてくれた。前から潰しにおきがいがありました(笑)。なおかつ最終ラインがクロスを跳ね返してくれた。それがいい結果につながったと思います」
今野は満足そうにそう言った。
このシステムを機能させた最大の要因は、今野を含めた遠藤と倉田秋ら中盤の選手の動きだった。とりわけ遠藤は、寄せのスピード、当たりの強さでワンランク上のレベルを見せ、チームを引っ張った。
攻撃面では今野や倉田の近くに寄って彼らをサポートし、うまく使った。速攻だけではなく、わざとテンポを遅らせてボールをさばくシーンもあり、遠藤の能力の奥の深さを見せてくれた。長谷川監督は「あんなヤットを久々にみた」と感嘆したが、まさに“サッカーの神”が降りてきたようなプレーだった。
課題をすぐ修正できる、という自信は長期戦で輝く。
これだけの短期間で、“違い”を見せたのは、本当に驚きでしかない。自分たちのスタイルを押し出すだけではなく、求められるシステムに柔軟に対応して自分たちのモノにしていく。そのためには全員の意志統一が必要だが、同時に戦術的な引き出しの多い経験のある選手が必要になる。遠藤や今野らベテラン組が中心となってシステムを理解し、やりやすいように改良した。それが変則的な3バックを生み、見事に機能させて柏を破ったのだ。
「3バックは今も考えながらプレーしているし、改良すべきところはある。でも、今回はやれた手応えがあった。課題をすぐに修正できるところがすごいし、それができるのはみんなの能力が高いってことだと思います」
課題に対応し、修正し、モノにする。
言うのは簡単だか短期間でこなすのは極めて難しい作業だ。ガンバは、それを容易にやってのけた。チームが不安と危機感が充満する中、奥底に眠るとんでもない力を見せ付けてくれたのである。