猛牛のささやきBACK NUMBER
金子千尋を巡る三角関係に終止符を。
伊藤光の座を狙う若月健矢の責任感。
posted2017/03/01 08:00
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Kyodo News
12球団の捕手のうち、昨年、規定打席を満たしたのは、巨人の小林誠司ただ1人。パ・リーグには1人もいなかった。
扇の要としてシーズンを通してどっかりと座り続ける捕手は年々少なくなり、現在は複数の捕手を併用する球団がほとんどだ。
そんな中、「今年は全試合出場を目指します」と宣言する若き捕手がいる。プロ4年目の21歳、オリックスの若月健矢である。
昨年は7月以降先発に定着し、チームの捕手陣で最多の85試合に出場した。バッターの反応を読み取る洞察力と、それを活かしたリードを首脳陣に高く評価され、信頼をつかんでいった。
エース金子の女房役を伊藤から奪わなければ。
ただ今年、若月が全試合出場という高い壁をクリアするための1つ目のハードルは、開幕戦にある。
オリックスの開幕投手は、エースの金子千尋と決まっている。昨年まで、金子が登板する試合はほとんど伊藤光がマスクを被った。金子が沢村賞を獲得した2014年には、金子と伊藤が最優秀バッテリーにも選出されている。若月が開幕スタメンを勝ち取るためには、そこに割って入らなければならない。
若月が初めて金子とバッテリーを組んだのは、昨年8月19日の楽天戦、0-1で迎えた9回表だった。この時は3本の長打や守備の乱れで2点を失った。若月は、悔しそうにこう振り返った。
「金子さんだからって、気を使っちゃいました。それに、『こう行かなきゃダメなのかな』って、光さんの真似をしようとしてしまった。いくらスーパーピッチャーでも、ピッチャーですから……もしまた組む機会があったら、嫌われてもいいので、自分が思っている通りにやりたいなと思います」