野球のぼせもんBACK NUMBER
島袋洋奨の3年目は窮地か、転機か。
甲子園で輝いたスライダーを再び。
posted2017/02/26 07:00
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
NIKKAN SPORTS
琉球トルネードが、午後のブルペンでただ一人、大きな鏡を前にひたすら左腕を振っていた。
2月19日の日曜日、ホークスキャンプには23200人もの観衆が訪れた。しかし、誰もその光景を目にしていない。
同時刻には紅白戦が行われていた。和田毅が先発し、侍ジャパンの内川聖一と松田宣浩が名を連ね、6回には注目新人の田中正義も登板した。メイン球場のアイビースタジアムは公式戦さながらの熱気と賑わいに包まれていた。
孤独な屋内ブルペンにも球場からの歓声が溢れ伝わってくる。
ブンッ、ブンッ。
その喧騒をかき消すようにタオルを片手にシャドーピッチングに精を出す。体をぐっとひねる独特なフォームは今も健在だ。
島袋洋奨の姿が、そこにあった。
森福が抜けた中継ぎ左腕候補として期待されるが……。
この前日には紅白戦に登板した。1回3安打1失点。先頭打者を見逃し三振に仕留めるなど簡単に2アウトを取りながら3連打を許してしまった。
今年がプロ3年目。昨年は1軍登板なしに終わった。通算2試合のみ。大卒選手であることを考えれば、崖っぷちの立場である。それでも今キャンプはA組に抜擢された。
ホークスの左腕事情。特に中継ぎは森福允彦がFA権を行使してジャイアンツに移籍したため、大きな穴がぽっかりと開いた状態だ。首脳陣としては新顔を探すための春季キャンプという意味合いがあるのだ。
島袋はその候補の一人だ。それだけに悔しさを滲ませているに違いない。そう思って声をかけたが、本人は少し違った手応えを得ているようだった。
「もちろん悔しいです。僕に今一番必要なものは結果ですから。だけど、昨年の秋からずっと感じは悪くないんです」