セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
イグアインが去っても得点は減らず。
ナポリの控えから覚醒した29歳の男。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2017/02/25 08:00
2016年のベルギー年間最優秀選手にも輝いたドリエス・メルテンス。小柄な29歳の突然の進撃が、周囲を驚かせている。
クラブ史上39年ぶりの1試合4得点!
圧巻だったのは昨年の12月だ。メルテンスは、点取り屋として完全に覚醒した。
6日に戦ったベンフィカとのCLグループリーグ最終節で決勝ゴールを決めると、週末のセリエA16節カリアリ戦(5-0)で“トリプレッタ(=ハットトリック)”を達成。さらに7日後の17節トリノ戦では、クラブ史上39年ぶりの“クアテルナ(=1試合4得点)”を完遂するなど大暴れ。
振り向きざまに放ったループシュートがイングランド代表GKハートの頭上をふわりと越えてゴールネットに収まったトリノ戦の優雅な4点目は、チームメートたちも大絶賛するビューティフルゴールだった。
4年前の加入から、立場はずっと控えだった。
メルテンスは飢えていた。
4年前の夏にPSVから移籍して以来、つねに主力の一角を担ってきた自負はあったものの、チーム内の立場でいえば、地元出身で人気絶大かつ同じ左ウイングのFWインシーニェの控えにずっと甘んじてきた。今年で30歳になる。
昇格組ペスカーラとの今季開幕戦で後半途中出場から2ゴールを決め、よもやの開幕黒星の危機からチームを救ったときも、指揮官サッリの評価はあくまでスーパーサブ扱い。「メルテンスは(先発起用はせず)途中出場で使いたい」とすげなかった。
だが、今季開幕から10節までに2敗2分と、タイトルを狙うにしては出足の鈍かったチームは、抜群のドリブルスキルを持つメルテンスが“偽の9番”へ定着するとトップギアに入った。
主将ハムシクとMFジーリンスキの両サイドハーフが中盤にダイナミズムをもたらし、FWカジェホンが次々にアシストを放つ。
DFたちのマークを巧妙にずらし、スペースの穴を穿つナポリの連動アタックは相手守備を突き崩し、仕上げにメルテンスがゴールを陥れた。