セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
イグアインが去っても得点は減らず。
ナポリの控えから覚醒した29歳の男。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2017/02/25 08:00
2016年のベルギー年間最優秀選手にも輝いたドリエス・メルテンス。小柄な29歳の突然の進撃が、周囲を驚かせている。
“イグアイン・ロス”はもはや過去のものに。
小さなエースFWは胸を張る。
「チームの好調に俺が役立てているのならこんなに嬉しいことはない。監督の理想とするサッカーは、このチームに完璧にピタリはまっているんだ」
23節終了時点で16ゴールを積み上げ、一時得点ランキングの首位に立ったメルテンスはエース待遇を手に入れ、くせ者指揮官やクラブの信頼も得た。本拠地サン・パオロはもちろんナポリの下町界隈でも、もはや“イグアイン・ロス”を嘆くファンはいない。
ベルナベウで足がすくんだナポリも、ホームならば。
ナポリのOB監督の1人である名将リッピ(中国代表監督)は、新エースへの賛辞とともにCLで古巣の善戦を期待した。
「メルテンスは生粋のストライカーのようにゴール枠を捉える能力が素晴らしい。彼のいるナポリが相手なら、ジダン率いるレアル・マドリーといえど相当手こずるだろう」
だが、ナポリは欧州王者の懐に飲み込まれた。
レアルに逆転負けを喫した1stレグで、ナポリの選手たちは歴史と威容を誇るサンティアゴ・ベルナベウと大会の雰囲気に気後れし、萎縮した。
エリア内でほとんどボールをもらえなかったメルテンスも、68分と70分の好機に足がすくんだ。
「何人かの選手は(緊張で)いいプレーができていなかったし、その代償は高くついた。だが、選手やチームはこうやって強くなっていくのだ」
サッリは、悔恨しきりの選手たちを労った。
「我々は未だレアルのレベルにない。しかし、彼らとの差はそこまで大きいわけでもない」と強気を崩さず、ホームでの第2戦を見据える。